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Y染色体遺伝子Zfy1とZfy2が相補的かつ多段階に精子形成を制御-東京医歯大ら

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2017年02月08日 AM11:45

Zfy1とZfy2のノックアウトマウスを作製、従来法より正確な方法で解析

東京医科歯科大学は2月3日、Y染色体遺伝子Zfy1とZfy2が相補的かつ多段階に精子形成を制御していることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大学大学院医歯学総合研究科システム発生・再生医学分野の浅原弘嗣教授らの研究グループが、同大学大学院医歯学総合研究科生殖機能協関学分野の久保田俊郎名誉教授ら、理化学研究所バイオリソースセンターの小倉淳郎室長ら、、国立がん研究センターとの共同で実施したもの。研究成果は、国際科学誌「PLOS Genetics」暫定版にオンライン公開された。


画像はリリースより

Y染色体は雄にしか存在せず、精子形成において重要な役割を担っていると考えられているが、その構造上の特殊性から、従来の相同組み換えを用いた方法ではノックアウトマウスの作製が困難であり、個々の遺伝子機能解析が十分に進んでいなかった。研究グループは新しいゲノム編集技術であるTALENやCRISPR/Cas9 systemを用いてY染色体上にある遺伝子のノックアウトマウスを作製し、その機能解析を行ってきた。

Zfy1とZfy2は1980年代に雄の性決定遺伝子候補として注目を浴びたが、その後Y染色体上のSryという遺伝子が真の性決定遺伝子であることがわかったため、長い間忘れられていた。しかし近年、Zfy1とZfy2が精子形成に関与することがわかり、にわかに注目を集め始めた。従来のZfy1とZfy2の研究はこれらの遺伝子をマウスなどに導入する方法を取っているが、今回研究グループはノックアウトという遺伝子の機能を調べる上でより正確な方法で解析を行った。

受精障害や初期胚の発生障害の一部の原因解明に期待

研究グループは、新しいゲノム編集技術であるCRISPR/Cas9 systemを導入することでZfy1ノックアウト(KO)マウス、Zfy2KOマウス、Zfy1とZfy2のダブルノックアウト(Zfy1/2DKO)マウスを高効率に作製することに成功。Zfy1KOマウス、Zfy2KOマウスは自然交配により産仔を得ることができたが、Zfy1/2DKOマウスは不妊だった。原因を調べると、Zfy2KO、Zfy1/2DKOの精子は奇形や運動率の低下を認め、その程度はZfy2KOよりもZfy1/2DKOのほうが重度だった。これらのことからZfy1とZfy2は相補的に精子形成に関与していることが示された。

Zfy1/2DKOマウスは体外受精を行っても受精卵を得ることができなかった。精子の奇形や運動率の低下以外の原因を調べると、Zfy1/2DKO精子はcapacitationという雌性生殖器内や培養液中で起こる受精に必要な変化が起こっておらず、それに続いて起こる先体反応も起こっていないことがわかった。

さらにZfy1/2DKO精子の受精能を調べるために顕微授精を行ったところ、Zfy1/2DKO精子の受精率は非常に低く、未受精卵の一部は活性化が起こる前の段階で発生が停止していた。これは精子に含まれる卵の活性化因子に異常があることを示している。またZfy1/2DKO精子を用いて顕微授精によって受精した胚を移植しても産仔を得ることができず、同様の胚を培養した結果、胚盤胞まで到達することなく発育を停止していた。この原因を調べるために受精卵の染色体染色を行ったところ、精子由来の染色体が断片化を起こしていることがわかった。

Zfy1とZfy2は遺伝子発現を制御する転写因子であり、今回の研究で認められたさまざまな表現型はZfy1とZfy2が制御する下流遺伝子の発現量が変化したために起こったものと考えられる。この下流遺伝子を同定するため、網羅的にタンパク質を調べることができる質量分析を行った結果、野生型(正常型)の精子タンパク質に比べてZfy1/2DKO精子タンパク質で発現量が低下していたもののうち、今回の表現型を説明しうる4つのタンパク質が含まれていた。その4つの遺伝子とは卵活性化因子であるPLCZ1、先体反応に関わるPLCD4、PRSS21、精子奇形に関わるHTTだった。Zfy1とZfy2のさらなる解明が受精障害や初期胚の発生障害の一部の原因解明へとつながることが期待されると、研究グループは述べている。

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