漢方医学の普及を目的に人材教育や研究助成を行う一般財団法人「日本漢方医学教育振興財団」が設立され、4月から本格的に活動を開始する。漢方薬最大手のツムラが実施してきた漢方医学教育関連事業を引き継ぎ、漢方医学教育研究者に対する研究助成や、大学教育での研究支援、医学教育研究助成結果を情報発信するためのシンポジウムの開催、医学教育を推進する外部団体との意見交換を行う。代表理事に就任した加藤照和氏(ツムラ社長)は、4日に都内で開催した設立会見で、「漢方医療の将来の定着を図る上で次のステップに行くためにいろいろな検討を進める中、1企業から独立した組織が必要と判断した。大学教育研究者への研究助成など1企業では担えない役割を担い、医学教育に関連した幅広い事業が財団の活動の軸になる」と語った。
大学の漢方医学教育をめぐっては、文部科学省から医学教育ガイドライン「医学教育モデル・コア・カリキュラム」で6年間の到達目標として「和漢薬を概説できる」が掲げられ、現在では全大学の医学部で漢方医学教育が実施されるようになり、そのうち8割以上の大学で8コマ以上の履修が必修とされるようになった。
ツムラでは2001年から17年間にわたって、漢方医学教育の情報発信の場として「漢方メディカルシンポジウム」を開催してきたが、「漢方医学教育を衰退させることなく取り組みを進めてきた」(加藤氏)と一定の役割を果たしたとの考え。今後、漢方薬のエビデンス構築や漢方医学と西洋医学の融合を実現するためには、漢方医学教育の推進事業を1企業で行うのではなく、外部に移す必要があると判断し、新たに財団を設立した。代表理事には加藤氏、専務理事に北島政樹氏(国際医療福祉大学名誉学長)、常務理事に伴信太郎氏(名古屋大学大学院医学系研究科総合診療医学分野教授)、評議員会議長には佐藤達夫氏(東京有明医療大学学長)が就いた。
活動内容としては、漢方医学教育に関する意見交換や定期的な会議の開催、医学教育研究者の研究助成を実施し、そこで生まれた教育に関する提言や研究成果に関して外部に情報発信していく。