ロタウイルスのリバースジェネティクス法を開発
大阪大学は1月31日、ロタウイルスの人工合成に世界で初めて成功したと発表した。この研究は、同大学微生物病研究所の金井祐太特任講師(常勤)、小林剛准教授らの研究グループによるもの。同研究成果は、米国科学誌「Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America(PNAS)」に公開されている。
画像はリリースより
ロタウイルスは乳幼児に下痢や嘔吐を引き起こすウイルスで、開発途上国ではロタウイルス感染によって死亡する乳幼児が多く存在する。ロタウイルスについては、これまで実用性の高いリバースジェネティクス法が確立されていなかったため、病原性の解析や新規ワクチン開発の大きな障壁となっていた。
RNAをゲノムに持つウイルス(RNAウイルス)のリバースジェネティクス法とは、大腸菌の持つプラスミドにクローン化したウイルスゲノム由来のcDNAなどを培養細胞に導入することで、感染性の組換えウイルスを人工的に合成する技術。この技術により、ウイルス遺伝子を任意に改変することが可能となり、ウイルス学研究の発展に大きく寄与してきた。
ウイルスの増殖機構の解明とともに、新規ワクチンの開発に期待
同研究グループは、ロタウイルスの11分節のRNAゲノムを発現するプラスミドに加えて、組換えウイルスの人工合成を促進する因子として、細胞融合性タンパク質FASTとRNAキャッピング酵素を利用し、人工的に組換えロタウイルスを作製することに成功。この技術を応用し、ロタウイルスの一部の遺伝子に変異を加えることで、増殖能が低下したロタウイルスや、発光酵素であるルシフェラーゼを発現するロタウイルスの作製にも成功したという。
今回の研究成果により、ロタウイルスの増殖機構の解明とともに、新規ロタウイルスワクチンの開発研究が進むことが期待される。ロタウイルスのリバースジェネティクス法の開発・技術により、任意の改変を加えることで人工的に病原性を制御したロタウイルスや、異なる国・地域で流行しているロタウイルス株に対して、より抗原性が適応したワクチン候補株を迅速に開発することが可能になると考えられるという。
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