2型糖尿病患者の死亡のうち、約50%は心血管疾患が原因
日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社と日本イーライリリー株式会社は2月2日、「ジャディアンス(R)」(一般名:エンパグリフロジン)によるEMPA-REG OUTCOME(R)試験のアジア人サブグループ解析の結果が、1月25日付けの「Circulation Journal」に掲載されたことを発表した。
糖尿病は、高血糖、高血圧、肥満などを伴うことから、心血管疾患は糖尿病の主要な合併症であるとともに、糖尿病と関連する主要な死亡原因である。糖尿病患者は、糖尿病に罹患していない人と比較して、心血管疾患を発生するリスクが2~4倍高く、2015年に糖尿病で死亡した全世界の500万人のうち2型糖尿病患者の約50%は心血管疾患が原因だったという。
ジャディアンスは、SGLT2に対して高い選択性を有するSGLT2阻害薬。2016年12月2日に米国食品医薬品局(FDA)が、心血管疾患を有する成人2型糖尿病患者に対する心血管死のリスク減少に関するジャディアンスの新たな適応を承認した。欧州では、2016年12月16日に医薬品評価委員会(CHMP)が採択したジャディアンスの心血管死のリスク減少に対する肯定的見解に基づき、2017年1月19日に欧州委員会(EC)が、同剤の心血管死のリスク減少に関するデータを含む添付文書の改訂を承認している。
心血管イベント・全死亡のリスクの減少を、アジア人においても確認
EMPA-REG OUTCOME試験では、心血管イベントの発症リスクが高い2型糖尿病患者において、標準治療にジャディアンスを上乗せ投与した結果、プラセボ投与群と比較して、主要評価項目である複合心血管イベント(心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中)のリスクを14%有意に減少。心血管死リスクを38%、全死亡のリスクを32%それぞれ有意に減少させたことが既に報告されている。
一方で、2型糖尿病の有病率、特に心血管イベントリスクには人種差があることが報告されているため、さらなる解析として、EMPA-REG OUTCOME試験に参加したアジア人2型糖尿病患者1,517人(全体集団の22%)における心血管アウトカムの解析が行われた。
その結果、ジャディアンス投与群は、プラセボ投与群に比べ、複合心血管イベントのリスクを32%減少(ハザード比0.68、95%信頼区間0.48-0.95)。また、心血管死のリスクを56%(ハザード比0.44、95%信頼区間0.25-0.78)、全死亡のリスクを36%減少させた(ハザード比0.64、95%信頼区間0.40-1.01)。ジャディアンスの心血管アウトカムならびに全死亡のリスクの減少はアジア人においても認められ、その結果はEMPA-REG OUTCOME試験全体集団の結果と一貫していたという。
また、アジア人集団における有害事象の割合は、プラセボ投与群で26.6%(136/511例)、ジャディアンス10mg群で27.1%(137/505例)、25mg群で28.5%(143/501例)に認められた。主な有害事象として、低血糖がジャディアンス10mg群で26.5%(134/505例)、25mg群で24.2%(121/501例)に認められたという。
なお、日本におけるジャディアンスの効能・効果は2型糖尿病であり、心血管イベントのリスク減少に関連する効能・効果の適応は取得しておらず、今後の承認取得については未定だという。