宮城、岩手両県の計63,002人の採血・採尿、調査票結果を分析
東北大学は2月1日、東北メディカル・メガバンク計画の地域住民コホート調査に、2013~2015年度に宮城県内と岩手県内の特定健康診査会場等で参加した63,002人分について分析し、その調査結果を明らかにしたと発表した。
東北メディカル・メガバンク計画は、東日本大震災からの復興と、個別化予防・医療の実現を目指し、東北大学東北メディカル・メガバンク機構(ToMMo)と岩手医科大学いわて東北メディカル・メガバンク機構(IMM)が実施しているもの。2013年より合計15 万人の参加を目標とし、地域住民コホート調査および3世代コホート調査等を実施して、試料・情報を収集したバイオバンクを整備している。
沿岸部が内陸部よりも心理的苦痛などのオッズ比が高い
今回は、そのうちの2013~2015年度に宮城県内および岩手県内の特定健康診査会場等で参加した宮城県37,175人、岩手県25,827人の計63,002人分について、調査結果を分析。その結果、身体活動量、喫煙、飲酒および震災時の自宅被害は、メタボリック症候群と有意な関連が認められた。男性では自宅被害なしの者に比べ、自宅が全壊した者は1.29(1.16-1.44)、 大規模半壊した者は1.26(1.06-1.48)とリスクが高く、自宅の被害の程度は、喫煙・飲酒・身体活動量・心理的苦痛・抑うつ症状を考慮してもなお、統計学的に有意なリスク上昇と関連していたという。
さらに、内陸部に対して沿岸部では、心理的苦痛、抑うつ症状、不眠およびPTSR(心的外傷後ストレス反応)のオッズ比が高く、内陸部居住者に対する沿岸部居住者のオッズ比は、心理的苦痛で1.08(0.99-1.17)、抑うつ症状で1.14(1.09-1.19)、不眠で1.15(1.09-1.20)、PTSRで1.57(1.38-1.77)であり、抑うつ症状、不眠、PTSR で統計学的に有意な関連が認められた。ただし、これらの統計学的有意差は、家屋損壊度・死亡または行方不明の近親者の有無で調整することによって消失すること、また、家屋損壊・近親者喪失のいずれにも該当しない群を対象としたサブ解析では、沿岸部居住者と内陸部居住者のリスクに有意な差はないか、むしろ小さかったことから、震災による被害が内陸-沿岸のリスク差に大きく影響していると考えられるという。
今後は、地域支援センター/サテライトで調査に参加した人々についても集計を進め、傾向の分析などに努めていくとしている。また、ゲノム解析やオミックス解析等、各種関連解析を進め、一部の情報は公開のデータベースとして広く多くの研究者の利用に供するとともに、試料・情報分譲の制度を通じて日本全国の研究機関での研究推進に役立てていくとしている。
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・東北大学 プレスリリース