■今夏メドに制度改正へ
厚生労働省は1月30日、製薬業界と薬事行政の方向性やあり方について議論する局長級の「薬事に関する官民政策対話」の初会合を開いた。既に再生医療等製品で導入されている「条件つき早期承認」の仕組みを、高い医療ニーズと有用性が期待される革新的医薬品にも適用を検討していくことを共有。今夏をメドに具体的な内容を固めることで合意した。今後、薬事に関する官民対話は年に1~2回開催する予定。
官民対話は、製薬業界側が薬事行政に特化した対話を要望していたことを受け、厚労省が局長級の会合を初めて開催することになったもの。行政側から、厚労省の武田俊彦医薬・生活衛生局長、森和彦大臣官房審議官、医薬・生活衛生局の各課長、医薬品医療機器総合機構(PMDA)の近藤達也理事長などが出席。一方、業界側からは、日本製薬団体連合会や日本製薬工業協会など5団体の代表が出席し、イノベーションの推進や適正使用の推進に向けた審査体制の整備や規制の国際展開など、薬事行政の方向性やあり方を議論した。
冒頭、あいさつした武田局長は「行政と業界の関係を大事にしながら、お互いに力を合わせたい。どういう方向に向かっていくか率直な情報交換ができればと思う」と対話への期待を述べた。多田正世日薬連会長は「対話が実現したことを大変嬉しく思う」と歓迎した上で、「薬事規制の面では、世界に先駆けて革新的医薬品が承認され、安全に使用される環境の整備に加え、良質で安価な後発品の安定供給と使用促進が大変重要だ」と要望を述べた。
この日の初会合では、革新的医薬品の承認審査について、製造販売後の条件をつけ、開発の早期段階で承認する「条件つき早期承認」の仕組みの導入を要望する意見が複数団体から出た。既に条件つき早期承認は、再生医療等製品の審査において導入され、実績を上げているが、市販後の有効性・安全性の検証が必要となる。
業界側の要望を受けて行政側は、製造販売後に実施する臨床試験には膨大な資金がかかることを踏まえ、早期承認の条件として医療情報データベース(MID-NET)などから得られる「リアルワールド・データ」の活用も含め、合理的で科学的に意義のある製造販売後データによって有効性・安全性を確認できるよう必要な制度改正を行う方向性で合意した。
今後、官民の実務レベルの協議を通じて現行制度を見直し、今夏頃までに条件つき早期承認を新たな制度でスタートさせる具体的な内容を固め、関係省令の改正で対応する予定。