医療従事者の為の最新医療ニュースや様々な情報・ツールを提供する医療総合サイト

QLifePro > 医療ニュース > 医療 > がん細胞浸潤の新たな分子メカニズム、細胞内タンパク質「IFT20」の働きを解明-神戸大

がん細胞浸潤の新たな分子メカニズム、細胞内タンパク質「IFT20」の働きを解明-神戸大

読了時間:約 1分51秒
このエントリーをはてなブックマークに追加
2017年01月31日 PM12:00

一次繊毛を消失したがん細胞におけるIFTの機能を解析

神戸大学は1月27日、(intraflagellar transport 20)と呼ばれる細胞内タンパク質が、ゴルジ体からの微小管形成を促進することで、がん細胞の浸潤を促進させることを発見したと発表した。この研究は、同大学医学研究科細胞生理学分野の西田満准教授と南康博教授らの研究グループが、ハーバード大学医学部のVictor W. Hsu教授およびマサチューセッツ大学医学部のGregory J. Pazour教授らと共同で行ったもの。同研究成果は、英国科学雑誌「Scientific Reports」に1月26付けでオンライン掲載されている。


画像はリリースより

がんによる死亡原因のほとんどは、浸潤とそれに続いて起こる転移によるといわれており、がん細胞の浸潤を司る分子メカニズムの解明と、それに基づいた革新的がん治療方法の開発が急務となっている。

ヒトのほとんど全ての細胞表面には細胞外情報を感受する一次繊毛が存在しているが、多くのがん細胞は一次繊毛を消失していることが知られている。IFT20は正常な一次繊毛の形成と機能に必須なIFTタンパク質のひとつだが、一次繊毛を消失したがん細胞においてIFTタンパク質がどのような機能を担っているのかは知られていなかった。

また、細胞(表面)膜タンパク質Ror2は、様々ながん細胞で過剰に発現し、がん細胞の浸潤・転移を促進することが示されているが、その分子メカニズムについては不明な点が多く残されていた。

IFT20を標的としたがん細胞浸潤の阻害方法の開発への応用も期待

多くのがん細胞は、浸潤突起と呼ばれる構造を形成することで、がん細胞の浸潤に対する障壁となる基底膜などの細胞外基質を分解し、周囲へ浸潤することが知られている。浸潤突起の形成には、ゴルジ体を介した細胞内輸送システムによるタンパク質や膜の供給が必要であり、そのためがん細胞のゴルジ体は浸潤突起に近接して配置していると考えられている。

同研究グループは今回、一次繊毛を消失した諸種のがん細胞を用いて、Ror2がIFT20の発現を誘導することによって、がん細胞の浸潤を促進することを発見。IFT20がゴルジ体タンパク質GM130およびAKAP450と複合体を形成することで、ゴルジ体からの微小管形成を促進し、浸潤突起形成に重要なゴルジ体の配置とゴルジ体内のタンパク質輸送を制御していることが証明されたという。この研究により、ゴルジ体由来微小管の形成に関わる新たな分子メカニズムと、そのがん細胞浸潤における重要な役割が明らかとなった。

今後、がん細胞におけるIFT20の機能と一次繊毛の消失との関連について解析を進めることで、がん細胞ではなぜ一次繊毛が消失しているのかという、根本的問題の解明に繋がると期待される。また、IFT20のがん細胞特異的な制御メカニズムを見出すことで、IFT20を標的としたがん細胞浸潤の阻害方法の開発などへの応用も期待できると同研究グループは述べている。

このエントリーをはてなブックマークに追加
 

同じカテゴリーの記事 医療

  • 血液中アンフィレグリンが心房細動の機能的バイオマーカーとなる可能性-神戸大ほか
  • 腎臓の過剰ろ過、加齢を考慮して判断する新たな数式を定義-大阪公立大
  • 超希少難治性疾患のHGPS、核膜修復の遅延をロナファルニブが改善-科学大ほか
  • 運動後の起立性低血圧、水分摂取で軽減の可能性-杏林大
  • ALS、オリゴデンドロサイト異常がマウスの運動障害を惹起-名大