■薬学発のシンクタンク目指す
城西大学は、大学院薬学研究科に修士課程の「医薬政策管理分野」を新設し、4月から講義を開始する。医薬関連の政策とマネジメント、経営を理解し、地域の保険薬局やドラッグストアで活躍できる薬剤師を養成するのが狙い。国や地方の制度に関わる行政職も含め、医薬政策とマネジメント・経営にまで精通した専門的な人材輩出を目指す。初年度は、チェーン薬局やドラッグストアなどで働く社会人を含め、5人程度の学生を受け入れる予定。修了後に取得できる修士(薬科学)の学位は、海外で広く知られているMHA(医療管理修士)の「城西版」として位置づける構想を描く。将来的には、同分野で養成した人材による薬学発のシンクタンク設立につなげたい考えだ。
超高齢化社会が急速に進み、医療・介護に携わる人材の有効活用と共に、地域包括ケアシステムの構築を視野に、保険薬局やドラッグストアにおいても多職種連携を重視した効率的なマネジメントや経営が求められている。ただ、薬学部・薬科大学の学生のほとんどが保険薬局、ドラッグストアに就職している現状にもかかわらず、最前線の現場に即した臨床教育を実践できる教員が少ない課題があった。
こうした中、城西大は、国が推し進める健康サポート薬局、かかりつけ薬剤師の政策を背景に、保険薬局やドラッグストアで働く薬剤師が住民のニーズや期待を理解し、地域で活躍できるようになるためには、学生の時から医薬政策やマネジメント、経営の知識を身につけておくことが必要と判断。今回、薬学研究科薬科学専攻に「医薬政策管理分野」と「栄養政策管理分野」を新設することにした。
医薬政策管理分野のカリキュラムは、必修科目として総合薬科学演習、先端薬科学演習、修士論文研究を履修し、選択科目では医薬政策管理特論、ヘルスケア産業経営管理特論、社会保障制度特論、医療マーケティング特論、サプライチェーンマネジメント特論などを学ぶ。保険薬局、ドラッグストア、政策の現場に精通した教員が講師陣となり、政策管理の重要性を理解できる内容の講座となっているのが特徴だ。
薬学研究科長の杉林堅次教授は、「いま言われている薬局の問題も、厚生労働省から指摘されるのではなく、薬剤師が地域住民の健康に対するニーズや期待を把握し、医薬政策やマネジメント、経営まで理解して自らの業務をアピールして評価してもらうのが筋ではないか。そういうことを学生が早い段階から勉強しておく必要がある」と狙いを語る。
健康に関することは、大学教員、学生、保険薬局やドラッグストアの現場を含め、薬学の立場からエビデンスを作り、主張していくべきという問題意識が出発点となっている。それだけに、将来は講座で育成した人材による薬学発のシンクタンク設立につなげたい考えだ。
講座は4月から、教員7人体制で修士課程(2年)のカリキュラムを開始し、初年度は薬局やドラッグストアで管理職を目指す社会人などを含め、5人程度の学生受け入れを予定している。修了後は、学位として修士(薬科学)を取得できるが、これを海外で広く知られている学位であるMHA(医療管理修士)の城西版として位置づけたい考え。MHAに準ずる学位を持った国や地方の行政職や政策管理に詳しい薬局、ドラッグストアの薬剤師を社会に輩出していくことを目指す。
杉林氏は、「健康政策を立案できる公務員、政策を理解して地域で活躍できる薬剤師を育て、ひと味違った人材として活躍してもらいたい」と期待を語っている。