アセチルコリンの遊離を高め、記憶分子CaMKIIを活性化することを証明
東北大学は1月26日、同大学大学院薬学研究科の福永浩司教授らの研究グループが、新しいアルツハイマー病治療薬シーズを開発したと発表した。研究成果は英国の科学雑誌「Neuropharmacology」電子版に1月16日付けで掲載されている。
画像はリリースより
アルツハイマー病では、記憶を維持するのに重要な神経伝達物質「アセチルコリン」の働きが低下する。研究グループは今回、T型カルシウムチャネル活性化薬「SAK3」が、アセチルコリン神経終末のカルシウム濃度を高めることにより、アセチルコリンの遊離を高めること、その結果、福永教授らが約30年前に発見した記憶分子CaMKIIを活性化することを証明した。さらに、記憶と認知機能が改善することをアルツハイマー病モデルマウスで証明した。
この治療候補薬は、記憶に関わる神経伝達物質の遊離を高める世界初の薬となる。さらには、既存の薬で治療が困難であったアルツハイマー型認知症の患者にも有効であることが期待できるとしている。
毒性・安全性試験が終了し、臨床試験を計画中
現在、アルツハイマー病治療には、軽度認知症から重度認知症への移行を予防する薬の開発が期待されている。研究グループによると、SAK3開発ステージは現在、毒性・安全性試験(前臨床試験)が終了し、臨床試験を計画中。SAK3は既存の薬と認知症を改善する機序が異なるため、軽度認知症から使用できる可能性があるとしている。
また、SAK3はアルツハイマー病の原因であるアミロイドベータ蛋白質の蓄積を抑制することもマウスで確認でき、認知症の原因を取り除く新しい治療薬としても期待できると、研究グループは述べている。
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