欧米で成人の10~20%、東アジアで5~10%と非常に有病率の高い胆石
東北大学は1月25日、メタボリックシンドロームで胆石が増えるメカニズムを、遺伝子改変マウスを用いて解明したと発表した。この研究は、同大学大学院医学系研究科の糖尿病代謝内科学分野の山田哲也准教授、浅井洋一郎医員、片桐秀樹教授らが、消化器病態学分野の下瀬川徹教授、病理診断学分野の笹野公伸教授、東北大学病院薬剤部の眞野成康教授、山形大学医学部内科学第二(消化器内科学)講座の上野義之教授、東北大学加齢医学研究所分子腫瘍学研究分野の田中耕三教授らとの共同で行ったもの。研究成果は「Gastroenterology」オンライン版に1月13日付けで掲載されている。
画像はリリースより
胆石は、欧米では成人の10~20%、日本を含む東アジアでは5~10%と、非常に有病率の高い疾患。また、予後が不良ながんのひとつである胆のうがんの危険因子であることが報告されている。一方、近年増加の一途をたどっているメタボリックシンドローム患者では、脂肪肝に伴って胆石症が発症しやすいことが知られているが、その理由は明らかとなっていなかった。
肝臓の低酸素への介入が脂肪肝に伴う胆石の治療につながる可能性
研究グループは、メタボリックシンドロームに伴う脂肪肝の状態では、肝臓内の血流が低下し肝細胞が酸素不足に陥ることに着目。ノックアウトマウスを用いて研究を進めたところ、肝臓内脂肪蓄積により、肝細胞では、酸素不足が生じ低酸素誘導因子(HIF-1α)が誘導・活性化されることで、胆汁への水分を供給するタンパク質(アクアポリン8)が減少し、その結果、胆汁が濃縮されてコレステロールが析出、胆石形成が促進されることが明らかとなった。
さらに、メタボリックシンドロームに伴った脂肪肝を有する患者の肝臓生検サンプルを用いた検討でも、胆石を有する患者では、肝臓のHIF-1αが増加していることも発見。このことから、マウスの結果がヒトでも裏付けられ、ヒトの胆石の原因として、脂肪肝に伴う肝臓の酸素不足が重要であることがわかったとしている。肝臓の低酸素に介入することが、今後脂肪肝に伴う胆石の治療、ひいては胆のうがん発症の予防につながる可能性が考えられると、研究グループは述べている。
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・東北大学 プレスリリース