ファンコニ貧血でも年10人、正しい診断が重要
京都大学は1月23日、小児遺伝性血液疾患における包括的な遺伝子診断のシステムを確立したと発表した。この研究は、同大学医学研究科の小川誠司教授、吉田健一助教、名古屋大学の小島勢二名誉教授、村松秀城助教、奥野友介特任講師、東京大学の宮野悟教授、白石友一助教らの研究グループによるもの。研究成果は、米国臨床遺伝学会の科学誌「Genetics in Medicine」に1月19日付けで掲載されている。
画像はリリースより
小児遺伝性血液疾患とは、生まれながらにして血液を作る働きに異常があり、貧血や白血球の減少、血小板の減少といった症状を来す病気の一群を指す。非常に稀な病気の集まりであり、最も患者の多いファンコニ貧血という病気でも、日本における患者数は年間10人程度。この病気の結果として貧血などが起こることは共通しているが、その原因はさまざまで、しかも、その原因によって治療法が全く異なるため、正しい診断を行うことが非常に重要とされている。
小児遺伝性血液疾患は、両親から引き継がれた遺伝子の異常か、あるいは患者本人に新たに生じた遺伝子の異常によって起こる。そのため、もっとも直接的な診断法は、遺伝子を検査することだが、小児遺伝性血液疾患の原因となる遺伝子は数が多く、それぞれの遺伝子も平均的な遺伝子よりとても大きいため、従来の方法であるキャピラリーシークエンス法を用いた検査は非常に困難だった。
371人中121人について、遺伝子診断が確定
そこで研究グループは、次世代シーケンサー(DNAなどの塩基配列を低コストで迅速に解析可能な装置)という新たな機器を用いて、小児遺伝性血液疾患の原因となる100以上の遺伝子を一度に解析することが可能となる、遺伝子診断システムを構築。実際の患者の検体を用いて検討を行ったところ、解析した371人のうち、33%に当たる121人の患者の遺伝子診断を確定できた。
また、遺伝子診断が得られた患者の約1割では、主治医が考えた診断(臨床診断)と遺伝子診断が一致しないことが明らかとなり、この検査が小児遺伝性血液疾患の正確な診断に貢献する可能性が示されたとしている。
日本全国で継続的にこの新しい診断システムで検査を行っていくことで、個々の患者について正確な診断を行うことに加えて、新たな遺伝子の異常や新たな病気の存在が判明することなど科学への貢献も期待されると、研究グループは述べている。
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・京都大学 研究成果