一般的なプラスチック材料に比べ、軟骨と類似した低摩擦な特性
北海道大学は1月20日、日本特殊陶業株式会社と共同で、同大学産学・地域協働推進機構に「高靱性ゲルの軟骨応用部門」を共同で開設したことを発表した。同大学の産業創出部門制度を利用し、ダブルネットワークゲル(DNゲル)を開発した同大学大学院先端生命科学研究院と、人工骨などの整形外科向け医療機器の製造販売を手掛ける日本特殊陶業に加え、開発段階から臨床使用を見据えた研究を行うため同大学大学院医学研究科も含めた連携体制を構築し、DNゲルの人工軟骨材料として実用化研究を効果的に進めていく方針を示している。
画像はリリースより
DNゲルは、同大大学院先端生命科学研究院ソフト&ウェットマター研究室にて開発され、人工軟骨材料の候補材として期待されている。一般的なゲルは、ゼリーや豆腐のように低強度、低弾性率、脆性的な材料であるのに対し、DNゲルは、“硬くて脆い高分子網目”と“柔らかくてよく伸びる高分子網目”という性質の異なる2種類の高分子網目が互いに助け合い、亀裂の進行を抑えることにより10~60MPaという非常に高い圧縮破断応力を示す。
加えて、DNゲルは水分を90%近く含んでおり、一般的なプラスチック材料と比較し、軟骨と類似した非常に低摩擦な特性を有しており、人工軟骨材料の候補材として優れた特性があるとしている。
2020年の臨床研究開始が目標
また、DNゲルの最表面近傍に骨伝導性を有するセラミックスであるハイドロキシアパタイト(Hap)を形成させることで、ゲルのクッション性を維持しつつ、骨との結合性を付与することができる。骨軟骨欠損部に補填した際には、軟骨下骨と結合し、周囲への脱落や転移を抑制することが可能になる。
さらに、通常、軟骨という組織には血管や神経などが存在していないため、外傷や摩耗により軟骨が損傷しても、皮膚などにできた傷のように自然治癒することはなく、現状、治療には困難が伴っているが、DNゲルをウサギの膝関節部分の骨軟骨に移植した結果、正常な硝子軟骨の再生を確認。これは、細胞を用いずに正常な硝子軟骨の再生が確認された世界で初めての例となる。
今回の開発は、2017年1月より始動しており、同大学大学院先端生命科学研究院および医学研究科と日本特殊陶業で連携し、材料組成の最適化、製造プロセスや安全性の確認、術式や周辺デバイスを含めた開発に取り組み、2020年に臨床試験を開始することを目標として進めていくとしている。
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・北海道大学 プレスリリース