リスク計算に重点を置いたアプローチでリスク予測法を開発
岩手医科大学 いわて東北メディカル・メガバンク機構(IMM)は1月19日、ゲノム情報(DNA配列)に基づいて発症リスクを予測する新規手法を開発したと発表した。この研究は、IMM生体情報解析部門の清水厚志特命教授、八谷剛史特命准教授を中心とした研究チームによるもの。研究成果は、科学誌「Stroke」オンライン版にて公開された。
画像はリリースより
IMMは、復興支援事業である東北メディカル・メガバンク計画の一環として、東北大学東北メディカル・メガバンク機構(ToMMo)とともに、岩手県・宮城県の被災地を中心とした大規模健康調査とゲノムコホート研究を実施。地域医療の復興への貢献と、個別化医療・個別化予防などの次世代医療体制の構築を目指している。
脳卒中は日本人の死因の第4位、要介護原因の第1位で、その6割を占める脳梗塞の患者数は80万人、年間6万5千人が死亡している。自分自身の脳梗塞のかかりやすさを知ることは、生活習慣の改善による予防につながることから、これまでも脳梗塞と関連の深い遺伝子多型を同定しリスクを予測しようとする研究が行われてきた。しかしながら、これまでにみつかった遺伝子多型では発症リスクを十分に予測できていなかった。
既知のリスク要因や生活習慣と組み合わせ、個別化予防実現に道
同研究チームは今回、従来のGenome Wide Association Study(GWAS)による「どの遺伝子多型が発症と関連するか」というアプローチではなく、「すべての遺伝子多型をリスク評価に用いる」というリスク計算に重点を置いたアプローチを取る方針のもと、動植物の品種改良に用いられていた遺伝統計の手法(polygenic model)を改良し、新規のリスク計算手法(iwate polygenic model:iPGM)を開発。このiPGMを用いて脳梗塞のリスク予測に取り組んだという。
まず、複数の国内バイオバンク・コホート研究の脳梗塞患者と健常者の検体から、iPGMを用いて脳梗塞発症リスク予測法を構築。続いて、ほかの複数の国内バイオバンク・コホート研究の検体を用いて発症リスク予測精度を検証した。その結果、高リスク群では低リスク群と比べ脳梗塞発症のオッズ比が1.8~2.0倍であることを確認。同研究チームが構築した方法で脳梗塞の発症リスクを予測できることを確認したという。
同研究チームは今後、今回のリスク予測法の改良を進めて精度をさらに向上させることで、既知のリスク要因や生活習慣改善などと組み合わせ、個別化予防を実現できる可能性があるとし、これらの手法が生活習慣病、がん、うつなどの発症リスク予測にも役立つことが期待できるとしている。