畑中氏は、昨年1年間を高額薬剤をめぐる最適使用推進ガイドラインや薬価の抜本改革など、「製薬業界のあり方が問われる1年となった」と振り返った。薬価制度の抜本改革に向けては、増大する医療費が社会保障政策上の大きな課題とし、薬価の毎年改定、新薬創出・適応外薬解消等促進加算、再算定、費用対効果評価などが「議論の俎上に載せられている」と述べた。
通常、2年に1度実施する薬価の毎年全面改定を実施するかどうかについては、今年中に結論を得る予定にあるが、「慎重かつ丁寧な議論」を求めた。その上で、「新薬の適切な評価を重要視しており、新薬収載時のイノベーションや新薬創出等加算の制度化が議論のベースになる。企業経営で中長期的な見通しを確保し、研究開発投資が促進される政策の実現に向けて取り組んでいきたい」との姿勢を示した。
具体的には、革新的な新薬創出によって、どういった効果が生み出されたかをデータとして提示し、業界側の意見を主張していく方向性を挙げた。畑中氏は「ある調査会社のデータでは、日本の医療用医薬品市場が今後5年にわたって横ばいとの予想もあり、新薬を出すことで日本の経済活動や患者の生産活動でどうプラスとなっているのかを提示していくことが重要」との認識を示した。
また、製薬企業の国際展開が進む一方、米国でのトランプ政権誕生や英国のEU離脱など国際情勢の変化に対しては、「医療制度の持続性と新薬のアクセス・評価をめぐる問題は各国共通の課題であり、日本固有の問題ではない。新薬を幅広い患者に適正な価格でどう届けていくかは、グローバルで考えなければならない時代にきている」と述べた。事業の予見性低下を指摘する声については、「保険償還では価格が低くなっているが、日本で先駆け審査指定制度、米国でブレークスルーセラピー、欧州でPRIMEといった革新的新薬をいち早く患者に届ける制度ができていて、私自身は楽観視している。価値のある新薬さえ出していければステークホルダーとの交渉機会が出てくる」の見方を示した。
一方、先進創薬の実現に向けては、疾患レジストリの創薬への活用を通じて、臨床研究中核病院を中心としたネットワーク化を進め、症例集積性の向上や中央治験審査委員会設置による治験効率化を推進していく。畑中氏は、「生物統計家の育成支援を通じて、臨床研究や治験実施機能を拡充する役割を担いたい」と語った。