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ハエで正常表面タンパク質Sasががん細胞の排除に必要なことを解明-京大

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2017年01月19日 PM05:10

Sasが変異細胞のPTP10Dに結合すると変異細胞の増殖を抑制

京都大学は1月17日、ハエの眼の組織にがんの元になる細胞を誘導し、この細胞を排除するのに必要な正常細胞側の遺伝子を探索した結果、Sasと呼ばれる細胞表面タンパク質ががん細胞の排除に必要であることを発見したと発表した。また、正常細胞ががんの元になる変異細胞に接すると、正常細胞の表面のSasが変異細胞の表面のPTP10Dと呼ばれるタンパク質に結合し、これにより変異細胞の増殖が抑えられると同時に、変異細胞が死にやすくなることもわかったとしている。


画像はリリースより

この研究は、同大大学院生命科学研究科の井垣達吏教授、山本真寿大学院生、大澤志津江准教授らの研究グループによるもの。研究成果は「Nature」に掲載された。

がんの元になる細胞が正常細胞に囲まれると組織から排除されるという現象は「」と呼ばれ、2009年、2011年にハエを用いた研究で井垣教授らが明らかにしている。がん細胞の排除にはJNKと呼ばれるタンパク質リン酸化酵素の活性化を介した細胞内シグナル伝達が重要であることまではわかっていたが、正常細胞がどのようにしてがん細胞を認識し排除するのかについては全くわかっていなかった。

さまざまな細胞排除現象におけるSas、PTP10Dの役割の解明へ

今回の研究では、ショウジョウバエをモデル生物として用い、正常組織中に生じたがんの元になる細胞を排除するのに必要な正常細胞側の遺伝子を探索した。その結果、Sasと呼ばれるタンパク質をコードする遺伝子が正常細胞で破壊されると、変異細胞が排除されなくなることがわかった。Sasは細胞表面に存在し、隣接する細胞の表面タンパク質と結合することで隣接細胞の性質を変化させることができるタンパク質。正常細胞の表面のSasは、隣接するがん細胞の表面にあるPTP10Dと呼ばれるタンパク質に結合し、変異細胞の性質を変化させることが明らかになったとしている。

PTP10Dと類似のタンパク質がヒトのがんに抑制的に働くことが報告されていたが、そのメカニズムはわかっていない。もし今回発見したメカニズムがヒトでも働いているとすれば、SasとPTP10Dの機能に着目し、正常細胞ががん細胞を選択的に組織から排除するという、これまでになかったがん治療法を構築できる可能性がある。今後、さまざまな細胞排除現象におけるSas、PTP10Dの役割を明らかにする予定と、研究グループは述べている。

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