医療従事者の為の最新医療ニュースや様々な情報・ツールを提供する医療総合サイト

QLifePro > 医療ニュース > 医療 > 薬剤追跡・標的タンパク質同定に役立つタグを持つスタンボマイシン類を創製-理研

薬剤追跡・標的タンパク質同定に役立つタグを持つスタンボマイシン類を創製-理研

読了時間:約 1分32秒
このエントリーをはてなブックマークに追加
2017年01月19日 PM05:40

天然有機化合物の構造多様性を創出する生合成経路を解明

理化学研究所は1月17日、天然有機化合物の構造多様性を作り出す新しい生合成経路を発見し、細胞内での薬剤の追跡や標的タンパク質同定に役立つ“タグ”を持つ新しいスタンボマイシン類の創製に成功したと発表した。この研究は、理研環境資源科学研究センター天然物生合成研究ユニットの高橋俊二ユニットリーダーら国際共同研究グループによるもの。研究成果は、国際科学雑誌「Nature Communications」に12月21日付けで掲載されている。


画像はリリースより

微生物が生産する天然有機化合物は複雑な構造を持ち、それらの中から多くの抗菌薬、、抗寄生虫薬、免疫抑制剤などが発見されている。ポリケチド化合物は、これら有用化合物の骨格を形成している化合物の一群であり、ポリケチド合成酵素(PKS)がその反応を触媒する。マロニルコエンザイムA(CoA)およびメチルマロニルCoAなどの主要伸長基質に加えて、多様な側鎖を持つアルキルマロニルCoAを伸長基質に用いることで、生合成産物であるポリケチド化合物は多用な構造をとる。これまで、アルキルマロニルCoAは、還元・カルボキシル化酵素(CCR)によって生合成されることが知られていた。

しかし、ある放線菌(Streptomyces ambofaciens ATCC23877)が生産するスタンボマイシン類はアルキルマロニルCoAをその骨格形成に用いているにも関わらず、その生合成遺伝子群の中にCCRに相同性を示す遺伝子が存在しない。そこで国際共同研究グループは、新しい生合成酵素の存在を予想し、その解明を試みたという。

酵素「SamR0483」が関与する新しい生合成経路

研究グループは、ポリケチド化合物のスタンボマイシンおよびリベロマイシンの生合成機構を解析することによって、CCR反応を経由しないアルキルマロニルCoAの生合成経路を探索。その結果、反応中間体のアシルCoAをカルボキシル化する酵素「SamR0483」が関与する新しい生合成経路を発見。また、生合成工学手法により、ルキンやアジド基といった細胞内での薬剤の追跡や標的タンパク質同定に役立つ“タグ”を持つ新しいスタンボマイシン類の創製に成功したという。

今後、同研究で見いだした生合成システムは化合物の構造多様化に寄与するだけでなく、天然有機化合物の作用機序解明に役立つ上述のタグを導入するツールとしての活用が期待できる、と同研究グループは述べている。

このエントリーをはてなブックマークに追加
 

同じカテゴリーの記事 医療

  • RET阻害薬の肺がん治療抵抗性、HER阻害薬併用で克服できる可能性-京都府医大ほか
  • MRI・CT内で安全に針の姿勢変更等が可能な球状歯車型空圧モータを開発-名大ほか
  • 統合失調症の陰性症状に「間欠的シータバースト刺激」が有用と判明-藤田医科大ほか
  • 視覚障害のある受験者、試験方法の合理的配慮に課題-筑波大
  • 特定保健指導を受けた勤労者の「運動習慣獲得」に影響する要因をAIで解明-筑波大ほか