■OTC扱える魅力で志望増
ドラッグストアを第1志望業界とした薬学生が全体の10%を超え、調剤薬局、病院・クリニックに続き、新卒薬剤師の進路として受け入れられつつあることが、薬剤師国家試験予備校大手「医学アカデミー薬学ゼミナール」が薬学生を対象に行った就職動向調査で明らかになった。また、インターンシップに参加した学生が多い調剤薬局ほど、より多くの内定者を確保しており、インターンシップを起点に、説明会、面接、内定獲得まで学生が選考に進んでもらう仕組みを構築していく重要性が浮き彫りになった。優秀な新卒薬剤師を採用するためには、企業で就業体験させる「インターンシップ」が決め手といえそうだ。
■新卒採用 インターンが決め手
調査は、薬学生の就職活動状況の実態を把握することを目的とし、昨年8月に薬ゼミオンライン登録者2960人を対象にウェブ調査を行ったもの。約6割程度が調剤薬局志望者となっているが、ドラッグストアの人気も高まってきている。実際、薬学生に「第1志望業界」を聞いたところ、調剤薬局の36%、病院・クリニックの35%に続き、ドラッグストアが11%と1割を超えた。地域に密着している点や、今後の将来性、患者だけではなく一般者とも触れ合える健康サポート機能への関心などが挙げられた。特に“OTC薬を扱いたい”という理由からドラッグストアを目指す学生が増えたことは注目すべき動きだろう。
薬学生の就職活動に大きな影響を与える要素としてインターンシップが挙げられている。調剤薬局志望者にインターンシップの参加社数を聞いたところ、「1社」が44%、「2社」が22%、「3社」が11%と平均で2.2社と回答。調剤薬局でインターンシップに参加した社名を上位企業順に並べると、トップは「アイングループ」で全体の約14%に達するなど人気が集中。日本調剤、クオール、ファーマライズホールディングス、総合メディカルと続いた。
人気の高い薬局のインターンシップでは、日本調剤が「薬剤の味見体験」、ファーマライズホールディングスが「アロマ体験」と特色ある取り組みを実践しており、結果的に学生の参加を促すことにつながっているようだ。
その一方で、インターンシップ参加者全員に交通費として、多額の金銭を支給している企業については、大学や学生から否定的な意見も挙げられていた。
説明会へのエントリー企業、説明会に参加した企業、面接を受けた企業、内定をもらった企業を挙げてもらったところ、各段階で回答が多かった上位企業はインターンシップに参加した上位企業と顔ぶれがほぼ変わらず、インターンシップの参加者数が新卒薬剤師を確保するのに大きく左右していた。「内定をもらった企業」では、アイングループが内定者全体の約15%を占め、クオールが約7%、日本調剤、総合メディカルが約6%、ファーマライズホールディングスが約4%となった。
ただ、エントリー社数を見ると、就職先の選択肢は広がっているようだ。学生による説明会へのエントリー社数はここ2年間で、「3社以内」から「1社」と絞り込み傾向が見られていたが、2016年度の説明会エントリー社数、説明会に参加した企業数を見ると、「2.4社」「2.6社」とそれぞれ前年度から0.3ポイント、0.4ポイント上昇した。中でもエントリー社数を「1社」と回答した学生の割合は、前年の53%から39%と一気に減少した。
こうした現象を引き起こした要因は、前年度にエントリー社数1社だけで進路を決めた大学の先輩の存在があり、「就職先を決めるに当たって、もっと多くの企業の話を聞いておけばよかった」との後悔にも似たアドバイスが薬学生に大きな影響を与えた可能性がある。
入社後の教育制度に対する関心も高い。薬局が実施する説明会で期待することとして、「研修制度への具体的な説明」を求める声が52%と、前年度から18ポイント増加した。給料や勤務地などの条件面のみならず、今後のキャリアを見据えて、教育面を重要視する学生が多く、やる気のある学生を多く採用していく上では、説明会で自社の教育制度をPRしていくことが重要な要素といえそうだ。改善すべき点としては、「人事担当者の対応」と指摘する学生が多くあり、人事担当者への教育も課題の一つになっている。