未治療の進行・再発NSCLC患者にも使用可能
がんに対する免疫チェックポイント阻害薬の新たな効果が注目される中、同クラスで2番手となるキイトルーダ(一般名:ペムブロリズマブ)の非小細胞肺がん(NSCLC)に対する国際共同臨床試験KEYNOTE-010の日本人集団でのサブ解析結果から、日本人集団でも同試験全体の結果と変わらない有効性と安全性が明らかになった。名古屋医療センター呼吸器内科の坂英雄氏が第57回日本肺癌学会で報告した。
キイトルーダは、免疫に関係するT細胞表面のPD-1受容体を標的とするヒト化抗モノクローナル抗体。免疫チェックポイント阻害薬としてはオプジーボに次ぐもので、16年9月に「根治切除不能な悪性黒色腫」を適応として承認を取得。同年12月には「PD-L1陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌」での適応も追加され、既治療の切除不能な進行・再発のNSCLCのみが適応のオプジーボと違い、未治療の切除不能な進行・再発のNSCLC患者でも使用が可能になる。
KEYNOTE-010試験は、年齢18歳以上、プラチナ製剤ベースの2剤併用療法やチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR変異陽性例、ALK転座陽性例)による治療後に病勢が進行し、PD-L1陽性(腫瘍細胞の1%以上にPD-L1が発現)の既治療NSCLC患者を対象とした国際共同無作為化非盲検第2/3相比較試験。試験には日本人91例を含む、1,034例が登録され、キイトルーダ2mg/kg群に345例、同10mg/kg群に346例、対照となった抗がん剤ドセタキセル群に343例が割付けられた。いずれも投与間隔は3週間に1回。全集団での解析では、主要評価項目の全生存期間(OS)はキイトルーダ2mg/kg群が10.4か月、同10mg/kg群が12.7か月、ドセタキセル群が8.5か月で、ドセタキセル群と比較したOSのハザード比は、2mg/kg群が0.71(p=0.0008)、10mg群が0.61(p<0.0001)で有意なOS延長効果が認められた。
有害事象の発現率はキイトルーダ2mg/kg群が63%、同10mg/kg群が66%、ドセタキセル群が81%。Grade3以上の治療関連有害事象発現率は、それぞれ順に13%、16%、35%。キイトルーダ群で頻度の高い有害事象は、食欲不振、疲労、悪心、皮疹など。また、キイトルーダ特有の免疫に関連する有害事象としては甲状腺機能低下症、肺臓炎、甲状腺機能亢進症が4~8%報告されている。
日本人集団では、OS中央値でグローバルの結果よりよい傾向
坂氏らが解析した同試験参加日本人集団91例の内訳は、キイトルーダ2mg/kg群が28例、同10mg/kg群が34例、ドセタキセル群が29例。患者背景では、年齢中央値、性別比、さらにPS0、扁平上皮がん、ステージ4、PD-L1陽性50%以上、ALK融合遺伝子保有、3次治療以上の各割合で3群間に差はなかったが、一般的に免疫チェックポイント阻害薬が効きにくいとされる非喫煙者、EGFR遺伝子変異陽性の割合はドセタキセル群に比べてキイトルーダ各群で高い傾向が認められた。
日本人集団で2016年3月31目をデータカットオフとしたOS中央値は、キイトルーダ2mg/kg群が13.3か月、同10mg/kg群が19.0か月(ハザード比0.74)、ドセタキセル群が11.9か月。ドセタキセルと比較したOSハザード比は2mg/kg群が0.76、10mg/kg群が0.74でともに延長する傾向を示した。坂氏は「(OS中央値に関しては)どの群もグローバルの結果よりも良い値になっている」と評した。なお、日本人集団でのGrade3以上の有害事象発現率は、ペムブロリズマブ2mg/kg群が14%、10mg/kg群が29%、ドセタキセル群が85%。主な免疫系有害事象の発現率は全グレード合計で1.6~4.8%だった。
これらから坂氏は、PD-L1発現陽性の既治療非小細胞肺がんに対するキイトルーダの日本人集団解析結果について「全集団で得られた結果と同様の優れた有効性と安全性が示された」との見解を示した。