■業界は前倒し実施を危惧
中央社会保険医療協議会は11日、薬価専門部会を開き、薬価制度の抜本改革に向けた本格的な検討に着手した。「オプジーボ」問題で顕在化した効能追加等に伴う市場拡大への対応として、収載時に年4回薬価を見直す対象薬の範囲や引き下げ方法、導入時期を議論。製薬業界は、企業経営に及ぼす影響が大きいとして2017年度の前倒し実施に懸念を示し、予見性に配慮するよう求めた。今後、基本方針に示された事項について議論を進め、5月頃と10月頃に業界から意見聴取を行い、年末に骨子をまとめる予定。
この日の部会では、昨年12月にまとめられた薬価制度の抜本改革に向けた基本方針を踏まえ、まず効能追加等に伴う市場拡大に対応するため、薬価見直しの対象薬の範囲や引き下げ方法、販売数量の把握、制度導入時期について検討を始めた。
吉森俊和委員(全国健康保険協会理事)は、「対象薬の範囲と引き下げ方法については最低限、現行の市場拡大再算定と同じ程度の対処をすべき」と主張。導入時期についても「18年度改定に先駆けて実施するのに特段の支障はない」との意見を述べた。その上で、「制度の柔軟性を確保することを考えれば、現行の再算定ルールと一体的、総合的に議論すべき」との考えを示した。
業界代表の加茂谷佳明専門委員(塩野義製薬常務執行役員)は、制度の導入時期に言及。収載時に実施する年4回の薬価改定について「国民皆保険の維持の観点であれば一定の理解をする」とした上で、「薬価制度は企業経営の根幹であり、予見性が非常に重要。既に各社が17年度の経営計画を立てている中での薬価改定の実施を危惧している」と前倒し実施に懸念を示し、予見性と各企業の経営計画に留意するよう要請した。
一方、平川則男委員(日本労働組合総連合会総合政策局長)は、留意すべき点に「患者の立場がない」と指摘。「薬価制度の検討に当たって、共通認識を持つ必要がある。患者の立場の視点をしっかり議論において踏まえていくべき」と述べた。
幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)は、留意すべき事項で効能追加等に関する開発意欲が示されたことに不快感を示し、「今、こういう文章が出てくるのには違和感がある。昨年末の基本方針に国民皆保険とイノベーションの推進の両立が述べられており、研究開発の支援も示されたことからすると一歩後退」と述べ、開発意欲をめぐる議論は不要と主張した。
今後のスケジュールとしては、基本方針に沿う形で原価計算方式、類似薬効比較方式といった薬価算定方法の正確性・透明性、外国平均価格調整や改定のない中間年の薬価調査と改定、後発品薬価のあり方について17年上半期で議論を進め、5月頃に業界から意見を聴取する。
その後、引き続き薬価算定方式と中間年の調査・改定のあり方、さらに新薬創出等加算や長期収載品薬価のあり方、イノベーションの評価について議論し、10月頃に再び業界から意見を聴取した上で、年末に骨子を取りまとめる予定。