遺伝性乳がん卵巣がん症候群の原因遺伝子「BRCA1遺伝子」に着目
群馬大学は1月11日、遺伝性乳がん卵巣がん症候群の原因遺伝子である「BRCA1」の新たな機能を発見したと発表した。この研究は、同大学先端科学研究指導者育成ユニットの柴田淳史助教および磯野真由研究員、同大学未来先端研究機構の新美敦子助教、同大学腫瘍放射線科の中野隆史教授を中心とする研究チームによるもの。研究成果は、国際雑誌「Cell Reports」オンライン版で公開されている。
画像はリリースより
遺伝情報をつかさどるDNAは日々の生活の中で傷を生じることがあるが、ほとんどの場合は正常に修復される。しかしBRCA1遺伝子に異常がある細胞は、傷ついたDNAを正確に修復することができず、DNAに変異が蓄積することが知られ、このDNA変異の蓄積ががん化の一因になると考えられている。今回、同研究グループはBRCA1に着目し、細胞が傷ついたDNAをどのように正確に修復するのかについて研究したという。
遺伝性乳がん卵巣がんの発症メカニズムの解明へ前進
その結果、BRCA1は、DNA損傷部位に集積する53BP1の脱リン酸化を促進することで、非相同末端連結(NHEJ)修復経路から相同組換え(HR)修復経路へと切り替えを行っていることを、世界で初めて証明。また、その脱リン酸化はプロテインホスファターゼ4(PP4C)が大きく寄与していること、BRCA1/PP4C依存的な53BP1の脱リン酸化が、DNA損傷部位からのRIF1の放出および53BP1repositioningを引き起こすことを見出したという。
今回の研究により、BRCA1は細胞内でのDNA修復の環境をNHEJからHRへと移行させる働きがあることが明らかになった。この研究が今後、遺伝性乳がん卵巣がんの発症メカニズムの解明や治療法の開発へつながることが期待される。
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