アリアドは、1991年に設立された米国マサチューセッツ州を本拠とする抗癌剤を主体とした製薬企業。現在、慢性骨髄性白血病とフィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病を適応とした抗癌剤「アイクルーシグ」を米国で発売しており、16年売上は約1億8000万ドルを見込む。
“25年に癌領域でトップ10入り”を目指す武田は、非ホジキンリンパ腫治療薬の抗体薬物複合体「アドセトリス」、多発性骨髄腫治療薬「ベルケイド」「ニンラーロ」の三つの薬剤を販売し、血液癌のフランチャイズを構築。しかし、各社が癌領域に攻勢をかける中、製品ポートフォリオの強化を目的にアリアドの買収を決断した。アイクルーシグの獲得で血液癌を強化すると共に、ブリガチニブで固形癌市場への参入を目指す。
中でもブリガチニブは、ALK陽性NSCLCの2次治療で米国申請中、欧州でも早期に申請を行う予定。1次治療への適応拡大に向けて第III相試験も進行中で、年間ピーク売上として10億ドル以上の大型化を見込む。
NSCLC適応で先行するALK阻害剤は、ロシュ・中外製薬の「アレクチニブ」やノバルティスの「セリチニブ」などがあるが、「非臨床試験での無増悪生存期間データを見ても、ベストインクラスになり得る」(クリストフ・ウェバー社長)と自信を示す。アリアドがNSCLC適応として開発し、第I相段階にあるEGFR/HER2阻害薬「APS32788」も同時に獲得し、肺癌のパイプラインを手厚くした。
武田は、08年に88億ドルで米ミレニアムを買収し、出遅れていたバイオ医薬品と癌領域の強化を図り、さらに11年には96億ユーロでスイスのナイコメッドを傘下に入れ、先進国だけではなく新興国へのリーチを広げた。二つの巨額買収の後は、選択と集中路線にシフトし、15年末に英アストラゼネカに呼吸器事業、さらに昨年末には富士フイルムに診断薬子会社「和光純薬工業」の売却を発表し、▽中枢神経系疾患▽消化器系疾患▽癌――の3領域に絞り込みを図った。さらに、自前主義から脱却して自社の研究拠点を集約し、他社とのパートナーシップを活用するオープンイノベーション戦略に転換してきたが、癌の強化に向け再び大型買収に踏み切った。
ウェバー氏は、10日の電話会見で、「特許切れによる事業リスクは減り、潰瘍性大腸炎治療剤エンティビオやニンラーロの成功で25年まで売上を落とすことは考えられない」と述べ、アリアドの戦略的買収で一段上の成長を目指す考えを語った。