不明だったIL-31の産生制御機構
九州大学は1月10日、アトピー性皮膚炎における痒み惹起物質であるIL-31の産生に、EPAS1というタンパク質が重要な役割を演じることを世界に先駆けて発見し、その作用機序を解明したと発表した。この研究は、同大学生体防御医学研究所の福井宣規主幹教授、大学院医学研究院の古江増隆教授らの研究グループによるもの。研究成果は、英科学雑誌「Nature Communications」に1月9日付けで掲載されている。
画像はリリースより
アトピー性皮膚炎は日本国民の7~15%が罹患している疾患であり、「痒み」に伴い生活の質が著しく損なわれることから、対策は急務となっている。IL-31は、アトピー性皮膚炎発症に重要な痒み物質で、主にヘルパーT細胞から産生されるが、その産生制御機構は不明だった。
DOCK8欠損患者が重篤なアトピー性皮膚炎を発症することに着目
研究グループは、DOCK8という分子を欠損した患者が重篤なアトピー性皮膚炎を発症することに着目し、このタンパク質の機能を解析した。その結果、DOCK8が発現できないように遺伝子操作したマウスでは、IL-31の産生が著しく亢進し、重篤な皮膚炎を自然発症することを見出したとしている。
さらに、そのメカニズムを詳細に解析したところ、DOCK8の下流でEPAS1が作動し、IL-31産生を誘導していることを突き止めた。IL-31産生におけるEPAS1の重要性は、アトピー性皮膚炎患者においても確認。このためEPAS1は、アトピー性皮膚炎の痒みを根元から断つための新たな創薬標的になることが期待されるとしている。
今回の結果が新しい治療薬の開発につながることを期待し、今後さらに研究を進めていきたいと、研究グループは述べている。
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・九州大学 研究成果