主催者を代表してあいさつした東薬工の内藤晴夫会長は、薬剤の価値とその価格が課題だと指摘した。製薬産業の担う役割として、「優秀薬剤を創出し、それらを必要とする人々にしっかりと届けられる『アクセス』が重要」とした一方、優秀薬剤の創出と医薬品アクセスを確保していくためには、「価格のあり方とアクセスの関係が今日的な課題となっている」との問題を提起した。薬価制度の抜本的改革に向けた議論が進められる中、薬剤が持つ価値をどのように評価していくかについて「もっと議論を尽くすべき」と語った。
特に近年、上市されたC型肝炎治療薬を例に挙げ、「多くの患者に治癒という価値をもたらしているが、患者数が治癒で減少し、これら薬剤の売上ピークは短期のうちに訪れ、ライフサイクルが非常に短くなる」とした。
また、医薬品産業の経営の視点からは、医療制度や薬価制度に一定の予見性や安定性が必要になる中、患者だけではなく、企業にとって重要な利害関係者である“株主”への責任にも言及。「経営をあずかる者は、株主に対して企業の将来性やその成長性などについて誠意を持って説明する義務を負っている。突発的な制度の変更ではなく、中期にわたる安定性と予見性を保った制度の構築をお願いしたい」と要請した。
さらに、関係4閣僚で策定された毎年改定を含む「薬価制度の抜本改革に向けた基本方針」の具体的内容の検討でも、「(経営の予見性や安定性に対して)十分ご配慮いただけることを願っている」とクギを刺した。
来賓あいさつでは塩崎恭久厚生労働大臣が、昨年1年間の薬価制度の議論を、抗癌剤「オプジーボ」をめぐる高額薬剤の問題と絡めて“オプジーボショック”とその衝撃を表現した上で、「高いだけで考えるのではなく、“高額だけど効く薬”の評価をどうするかが大事な問題であり、われわれとしても議論していく必要がある」と強調した。
今後の薬価制度の抜本改革に向けては、▽イノベーションの維持▽国民皆保険の維持▽医療の質向上▽国民負担の軽減――の四つの原則が大前提に立った議論が必要とし、「具体的に制度化するためには議論を変えなくてはいけない」と述べた。