従来の筋病理所見は検出感度が低く、確定診断がつかないケースが多い
国立精神・神経医療研究センター(NCNP)は1月6日、厚生労働省指定難病のひとつである皮膚筋炎の診断において、筋細胞上に発現するMxA(ミクソウイルス抵抗蛋白質A)が、従来のものと比較して最も優れた診断バイオマーカーになることを明らかにしたと発表した。この研究は、NCNP神経研究所 疾病研究第一部の漆葉章典氏、西川敦子氏、鈴木理恵氏らの研究グループによるもの。同研究成果は、米医学誌「Neurology」オンライン版に2016年12月31日付けで掲載されている。
画像はリリースより
皮膚筋炎は小児から高齢者にまで幅広く発症し、炎症性筋疾患の中では比較的頻度の高い疾患で、病因の詳細はわかっていない。筋肉と皮膚に炎症が生じることで、筋力低下や筋痛、顔や手指などの皮膚に生じる発疹を主症状とするが、一部の患者では間質性肺炎やがんといった生命に関わる合併症を伴うことがあり、早期診断と適切な治療介入の開始が重要とされる。
皮膚筋炎の正確な診断には、筋肉の一部を採取して行う筋病理診断が有用とされ、特に線維束周囲性萎縮という筋病理所見が皮膚筋炎の診断で重視されているが、その検出感度は低く、確定診断がつかないケースが多いこと、さらには初期に明らかな皮膚病変を伴わないケースもあることから、診断の遅れが問題とされてきた。そこで同研究グループは、皮膚筋炎のより高感度の診断バイオマーカーの開発に着手したという。
筋細胞上のMxA発現を検出、従来法より優れた感度
近年、皮膚筋炎の発症に1型インターフェロンと呼ばれる炎症物質が関わることが報告されている。同研究グループはバイオマーカーの候補物質として、1型インターフェロンによって誘導されて発現する蛋白質の一種であるMxA(ミクソウイルス抵抗蛋白質A)に着目。筋検体でのMxAの発現を解析したところ、皮膚筋炎患者34例中24例(71%)でMxAが筋細胞上で発現していることを確認した。これは従来の皮膚筋炎の診断マーカーである線維束周囲性萎縮や毛細血管への補体沈着における陽性率(各47%、35%)よりも高く、最も高感度であることが示されたという。
また、MxAの発現は、重度の間質性肺炎を伴うタイプの皮膚筋炎や、がんを伴った皮膚筋炎においても観察された。さらに、他の炎症性筋疾患患者(多発筋炎、抗合成酵素症候群、封入体筋炎、自己免疫介在性壊死性ミオパチー)でMxAが陽性であったのは120例中2例(1.7%)のみであり、特異性の観点でも従来の診断マーカーと同等以上であることが確認されたという。
MxAの筋細胞上での発現は、皮膚筋炎の診断において感度71%、特異度98%という高いポテンシャルをもち、これは従来の診断マーカーである線維束周囲性萎縮(感度47%、特異度98%)や毛細血管補体沈着(感度35%、特異度93%)と比較して最も優れた診断マーカーになることが示された。従来の診断マーカーより判定が容易であることも利点となることから、今回の研究成果は、皮膚筋炎の診断精度の向上に大きく貢献すると期待されている。