色の好みを対比して数値化
京都大学は2016年12月26日、自閉症スペクトラム障害(ASD)児は黄色が苦手で緑色を好む傾向があることがわかったと発表した。この研究は同大学霊長類研究所の正高信男教授とマリン・グランドジョージ レンヌ第一大学講師らの研究チームによるもの。研究成果はスイス学術誌「Frontier in Psychology」に掲載されている。
画像はリリースより
ASDでは、相互的な対人関係が苦手、興味関心が限られているといった症状が現れるが、その一因として障害に伴う知覚過敏があると考えられている。今回、同研究グループは知覚過敏の中でも色彩に着目し、ASD児の色彩感覚にどのような特徴がみられるかを調査。レンヌ在住で色覚障害のない4~17歳のASD男子29名を対象に、同年齢の定型発達男子38名(コントロール群)と色の好みを比較し、赤、青、黄色、緑、茶、ピンクの6色について対比較を行って各色の好感度(好みの程度)を数値化したという。
刺激の強い黄色が苦手、生活環境に配慮を
その結果、ASD児、コントロール群いずれにおいても、赤と青がもっとも好まれる点は共通していた。一方、コントロール群では黄色の好感度が高く、ASD児では緑と茶の好感度が高く、黄色は好まれなかった。黄色に長時間さらされると、障害のない人でも感覚疲労を起こすことが知れられているが、これは黄色があらゆる色の中で、もっとも輝度が高く、生理的に刺激の強い色彩であることと関係していると考えられるという。同研究グループによると、一般的に通常より知覚水準が過敏な自閉症児では、黄色に対する日常的な感覚疲労の結果、好感度が低下し、より生理的に刺激のおだやかな緑と茶が好まれると考えられるという。
同研究グループは、「自閉症は他人の心が理解できない、共感能力が乏しい障害といわれるが、環境から受け取る刺激が強すぎることが生活の大きな妨げになっている」とし、街頭の広告や看板には目を引く色が多く使われているが、ASD児には苦痛な場合も多いことから、生活環境を整える際には、周囲が色彩の面でも配慮する必要があることが示唆されたとしている。
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・京都大学 研究成果