免疫系を刺激するアジュバント効果がアレルギー性炎症を誘導
大阪大学は12月21日、微細粒子の吸入によるアレルギー性炎症の発症機構を解明したと発表した。この研究は、同大学免疫学フロンティア研究センターの石井健特任教授および黒田悦史特任准教授らの研究グループによるもの。研究成果は、米科学誌「Immunity」にオンライン掲載された。
画像はリリースより
アレルギー性疾患は先進国を中心に増加の一途をたどっており、その要因のひとつとして大気中に浮遊する微細粒子(PM2.5、黄砂、ディーゼル粒子など)の関与が示唆されている。これまで多くの報告から、このような微細粒子は免疫を刺激する「アジュバント効果」を有しており、アレルギー因子のIgEを誘導してアレルギー性炎症を引き起こすことが示されていたが、その詳細は明らかになっていなかった。
アレルギー性炎症や肺の炎症性疾患の予防や治療法開発へ
PM2.5などの微細粒子は、吸入されると気道の奥にまで到達、炎症反応を惹起する。炎症反応が起こると肺に常在する肺胞マクロファージが微細粒子を貪食し、体外へ排出させると考えられている。
そこで同研究グループは、マウスから回収した肺胞マクロファージを使ってさまざまな種類の微細粒子を貪食させたところ、アレルギー性炎症を引き起こす微細粒子を貪食した場合にのみ、肺胞マクロファージが細胞死を起こし、IL-1アルファというサイトカインを放出することを突き止めた。また微細粒子をマウスの肺に投与すると、IL-1アルファが2週間にわたって肺に放出され続け、その間にアレルゲンを吸入するとIgEが誘導されることが認められたという。これは、微細粒子吸入後は長期的にIL-1アルファが放出され、アレルゲンに感作されやすい状態が続いていることを示している。また肺には異所性リンパ節といわれるリンパ組織が形成され、それがIgE誘導に関与する可能性が示唆されたという。
今回、微細粒子がアレルギー性炎症を引き起こす仕組みが明らかになったことで、微細粒子によるアレルギー性炎症だけでなく、肺の炎症性疾患の予防や治療法につながることが期待されると、研究グループは述べている。
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