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生活習慣病、GLが推奨する薬剤を処方しない医師多く-日本認知症学会学術集会で発表

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2016年12月27日 AM11:00

・寝たきり予防プログラム「栗原プロジェクト」の調査結果から

近年、患者数の増加が指摘されている認知症。その発症には脳血管疾患なども含めた生活習慣病がベースにあることが従来から指摘されている。東北大学が宮城県栗原市の地域住民を対象に行った認知症・寝たきり予防プログラム(栗原プロジェクト)での調査から、高血圧や糖尿病患者では関連学会などが策定した診療ガイドラインの推奨薬剤の処方率が低いことが明らかになった。同大学サイクロトロン・ラジオアイソトープセンター高齢者高次脳医学寄附研究部門の今川篤子氏らが第35回日本認知症学会学術集会で発表した。

栗原プロジェクトは宮城県栗原市在住の75歳以上の後期高齢者592例を対象に、2008~2010年に高血圧・糖尿病・冠動脈疾患・認知症の有病率や治療状況などについて調査を実施。今回の今川氏らの研究ではこれら対象住民全員のお薬手帳を調査し、この当時用いられていた「高血圧治療ガイドライン2004/2009」(日本高血圧学会編)、「糖尿病治療ガイド(2008-2009)」(日本糖尿病学会編)と照合した。

対象住民の中で糖尿病や耐糖能異常者は126例、高血圧症や調査時に高血圧と診断されたのは504例。このうち糖尿病の124例と高血圧の440例は既にそれぞれの疾患と診断を受けていた。対象住民における有病率は、糖代謝異常が21%、高血圧症が74%だった。

副作用への懸念が、推奨薬剤の遵守を難しくしている可能性

糖尿病の診断確定例124例中、101例が高血圧を合併し、さらにこのうち33例が冠動脈疾患を有していた。糖尿病で高血圧はないものの冠動脈疾患を合併している例も6例いた。糖尿病治療ガイドでは心血管合併症を有する糖尿病での推奨薬剤はインスリン抵抗性を改善するチアゾリジン系やビグアナイト系の薬剤だが、調査対象でこれらが投与されていた遵守率は約12%にすぎなかった。また、高血圧症380例のうち耐糖能以上がなく、(CKD)もない220例では、ガイドライン推奨薬剤の処方割合が8割を超えていた。しかし、高血圧症で耐糖能異常がなくCKDがある67例、高血圧症と糖尿病・耐糖能異常がありCKDはない67例、3疾患いずれも合併している26例ではいずれも当時のガイドライン推奨薬剤であるアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)、アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE)、直接的レニン阻害薬(DRI)の処方割合は非推奨薬剤の処方割合よりも低く、3疾患合併例での推奨薬剤遵守率に至ってはわずか12%であった。

また、この高血圧症380例を、同じく糖尿病・耐糖能異常と冠動脈疾患の合併の有無で分類したところ、耐糖能異常がない症例では冠動脈疾患の合併の有無にかかわらず推奨薬剤の遵守率が高く、糖尿病・耐糖能異常があり、冠動脈疾患を合併していない例でも遵守率は高かった。その一方で高血圧症、糖尿病・耐糖能異常、冠動脈疾患を全て合併する例では、推奨薬剤としてARB、ACE、DRIに加えカルシウム拮抗薬も挙げられており幅広いにもかかわらず、推奨薬剤の遵守率は半分以下の約47%だった。

特に複数の疾患を合併している複雑な症例ほど推奨薬剤遵守率が低く、今川氏らは「推奨薬剤についての認識不足の可能性がある」と分析。同時に(1)虚血性心疾患合併の糖尿病例の場合に、糖尿病で推奨されている薬剤が心不全例には慎重投与であること、(2)虚血性心疾患合併糖尿病で降圧薬処方が必要なケースでは、腎機能低下の恐れや、心疾患で処方されている冠拡張薬の影響で目標血圧に達している可能性があること、(3)腎障害合併高血圧症の場合は推奨されているレニン系薬剤が腎機能悪化や高カリウム血症の副作用に注意が必要であることなどの理由から、推奨薬剤の処方が回避された可能性があることも指摘した。

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