■新潟薬科大が判断
新潟薬科大学は19日、長野県初の薬学部として、2018年4月を目指して進めていた「長野薬学部」(仮称)の開学を「1年間遅らせる」と発表した。教育計画のさらなる充実を図ることや、地元の「最大限の理解」を得て長期実務実習等の受け入れ環境の整備に「若干の時間を要する」ことなどが延期の主な理由。新学部をめぐっては、今秋に長野県を中心に隣接県を含む高校生を対象に実施した「ニーズ把握調査」で進学需要が大きいことが認められ、地域経済への波及効果も期待されることから、長野県や上田市の財政支援を受ける形で検討が進められていた。薬剤師不足にあえぐ地域の医療関係団体からも歓迎の声が上がっており、信州大学医学部との連携も視野に入れた新たな試みが始まろうとしていたが、1年間延期という形になった。
新潟薬大は、新学部の開設時期を延期した理由について、「新キャンパスの設計はほぼ完了したものの、教育計画のさらなる充実を図り、万全の運営体制のもとで開設するため、地元の最大限の理解を得た上での学生の長期実務実習等の受け入れ環境の整備に若干の時間を要するものと判断されるため」と説明している。
同大薬学部(臨床薬物治療)教授で、「長野薬学部」(仮称)の設置準備室長を務める若林広行氏は、8月24日付の薬事日報のインタビュー記事で、新キャンパスの建設には多額の費用がかかるため、長野県や上田市から一定の財政支援が得られない場合は、「残念だが、経営判断として撤退することになるだろう」とコメントしており、新潟キャンパスにある既設の学部との「経営上の両立」が、最終的な設置の判断基準になるものと見られる。
長野県内には薬学部がないため、毎年、200人弱の学生が県外の薬学部に進学しているが、卒業後に長野県に戻ってくる学生は10人弱にとどまっており、医療現場に薬剤師が足りていないのが現状だという。
第三者機関が今年9~10月にかけて長野、群馬、山梨、石川、富山、埼玉の高校73校、6095人(高校2年生)を対象に行った「進学意向調査」によると、「長野薬学部を受験したい」と考えている高校生や潜在的な進学ニーズが入学定員(100人)の約10倍に及ぶことが判明。長野県は「薬学部がない空白地域」でもあることから、他の地域にはないニーズの高さを示している。また、新校舎の建設や新学部設置が長野県経済に与える影響について、長野経済研究所が調査したところ、「一定の経済波及効果が期待できる」との結果が得られたという。
新潟薬大は、08年9月1日に薬剤師認定制度認証機構(CPC)から認証機関(プロバイダー)の認証を受けており、薬学部のない長野県で薬剤師生涯教育の拠点になることも期待されている。
同大では、「開設時期が1年遅れるが、極めて旺盛な進学需要を背景に、19年度の学部開設に向け、さらなる支援、協力をいただきたい」としている。