ハミルトンうつ病評価尺度と自記式質問票によるPHQ-9を実施
九州大学は12月19日、うつ病の重症度、および「死にたい気持ち(自殺念慮)」に関連する血中代謝物を同定したと発表した。この研究は、日本医療研究開発機構(AMED)・障害者対策総合研究開発事業の支援により、同大学大学院医学研究院の神庭重信教授(精神医学分野)、加藤隆弘特任准教授(先端融合医療レドックスナビ研究拠点)、康東天教授(臨床検査医学)、瀬戸山大樹助教(同)、大阪大学大学院連合小児発達学研究科の橋本亮太准教授、国立精神・神経医療研究センター神経研究所の功刀浩部長(疾病研究第三部)、服部功太郎室長(疾病研究第三部・NCNPバイオバンク)らを中心とする共同研究グループによるもの。研究成果は、国際科学雑誌「PLOS ONE」に12月16日付けで掲載されている。
画像はリリースより
抑うつ重症度評価は精神医療場面に限らず多くの分野で重視されている。これまでは精神科医による診察・面接により行う方法が一般的だった。自記式(アンケート)による抑うつ重症度評価法も開発されているが、いずれも本人の主観的な訴えや態度に基づいており、評価が難しいことも稀ではなく、より客観的な評価法の開発が求められている。
今回の研究では、九州大学病院、大阪大学医学部附属病院、国立精神・神経医療研究センター(各機関の連携病院・クリニックを含む)を受診した患者を対象に、専門家面接によるハミルトンうつ病評価尺度(HAM-D)と自記式質問票によるPHQ-9の2種類の抑うつ重症度評価を実施。さらに、患者から採血を行い、数多くの代謝物を微量の血液成分から同時計測できる質量分析-メタボローム解析を用いて、100種類以上の血中代謝物を計測した。
抑うつ重症度に関連する血中代謝物を20種類同定
共同研究グループが3つの医療研究機関それぞれの患者において、血中代謝物と抑うつ重症度(HAM-DおよびPHQ-9の値)の相関を調べたところ、抑うつ重症度に関連する血中代謝物を20種類同定することに成功。3-ヒドロキシ酪酸、ベタインなど5つの代謝物は3機関の患者群で共通して抑うつ重症度に強く関連することがわかった。
さらに、抑うつ気分、罪悪感、自殺念慮などそれぞれの症状ごとに関連する代謝物が異なることを発見。例えば、自殺念慮に関しては、脳内免疫細胞ミクログリアとの関連が示唆されるキヌレニン経路の代謝物が強く関連していた。また、人工知能などで活用されている解析技術である機械学習を導入して、数種類の代謝物情報から自殺念慮の有無やその程度を客観的に予測するためのアルゴリズムを開発したとしている。
今回の研究成果は、うつ病の客観的評価法開発および臨床検査応用に大きく貢献するだけでなく、うつ病の病態解明や、見出した代謝物をターゲットとした食品・薬品開発促進への波及も期待できると、共同研究グループは述べている。
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