8時間駆動、バッテリ込みで398gと軽量で違和感なく
北海道大学は12月16日、株式会社ニコンと共同で2015年に開発した、着るだけで作業中の腰の負担を可視化することができる複数のセンサを内蔵したセンサ内蔵ウェアをさらに進化させたと発表した。この研究は、同大大学院情報科学研究科の田中孝之准教授らの研究グループによるもの。
画像はリリースより
現在、さまざまな職場で作業員の負担や疲労の軽減、特に腰痛予防が求められており、研究グループは各種作業の「軽労化(R)」に対する取り組みを行っている。2015年には、ニコンとの共同研究で、いつ、どのような作業で、どの程度の負担が作業者にかかるのかを容易に察知することができるセンサ内蔵ウェア「着るレントゲン」を開発し、介護現場での実証試験により、介護者の腰の負担をリアルタイムに計測、管理することに成功した。しかし、これまでは姿勢の変化に伴う自重による腰の負担は計測できたが、患者を抱きかかえたり、荷物を持ち上げたりなど、外部から受ける力による作業の負荷には対応できていなかった。
これまでのウェアには、加速度センサと曲げセンサが内蔵されていたが、今回新たに背中の筋肉の活動を計る「筋硬さセンサ」を内蔵。ウェアを着ると、それらが腰と背筋に密着し、内蔵したマイコンで各種計算、制御、データ保存ができる。内蔵バッテリで8時間駆動でき、バッテリ込みで398gと軽量かつ柔軟素材でできているため、違和感なく装着できるとしている。
介護施設などの業務改善につながるソリューション提供へ
装着すると、加速度センサと曲げセンサの情報から、腰の負担(椎間板圧迫力)を計算するために必要な腰仙椎アライメント(脊椎の腰部の位置・姿勢)をレントゲンと同精度でリアルタイムに推定。腰部X線画像を撮影した人数を増やし、アライメント推定精度も高まった。また、筋硬さセンサは、荷物を持ち上げることで増加する背筋の緊張力をリアルタイムに計測することができる。腰の負担の大部分を占める背筋の緊張力を筋硬さセンサで正確に検知することで、荷物の重さを逆に推定し、腰にかかる負担を正確に推定する画期的なセンシング技術を開発した。
実際、荷物持ち上げ実験を行ったところ、従来の姿勢変化に伴う腰の負担推定に比べて、筋硬さセンサを用いることで平均して約3~5割推定誤差を軽減し、精度良く腰負担を推定することができたという。
将来的には、介護施設ほか労働現場で活用できる製品・サービスとしての展開を考えており、作業中の腰負荷データを蓄積し、ビッグデータ解析することで、腰負荷の軽減、人員配置の最適化など、業務改善につながるソリューションの提供を行うべく、開発を進めていく予定。また、筋力補助スーツなどのアシストツールの補助効果を評価したり、アシストツールのセンサとしても活用が期待できると、研究グループは述べている。
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・北海道大学 プレスリリース