■医薬品の開発投資は高水準
総務省統計局は16日、「2016年科学技術研究調査」の結果を公表した。15年度の企業や大学の科学技術研究費の総額は、前年度比0.2%減の18兆9391億円と、過去最高となった前年から一転して、3年ぶりに減少した。産業別では「医薬品製造業」が1兆4577億円で、前年度から2.5%減少。自動車や航空機、船舶などを製造する「輸送用機械器具製造業」の2兆9529億円、パソコンや映像・音響機器など「情報通信機械器具製造業」の1兆5476億円に続き、3番目に企業研究費が多く、全産業の10.7%を占めた。
国内総生産(GDP)に対する研究費の比率は、前年度比0.10ポイント減の3.56%と、3年ぶりに低下した。米・英・独・仏・伊などの主要8カ国の中で最も高い水準を維持している。
研究費の内訳は、企業が13兆6857億円で研究費全体に占める割合が72.3%と最も大きかった。大学等は3兆6439億円で19.2%、非営利団体・公的機関は1兆6095億円で8.5%を占めた。前年度と比べると、企業が0.7%増と伸びは鈍化したものの、引き続き増えたのに対し、非営利団体・公的機関が4.7%減、大学等も1.4%減と、アカデミア等の研究費は減少傾向にあった。
企業の研究費を産業別に見ると、医薬品製造業が1兆4577億円で、輸送用機械器具、情報通信機械器具に次いで3番目となった。ただ、売上高に対する研究費比率では、医薬品製造業が11.93%と全製造業の中で最も高かったが、前年度に比べて0.28ポイント低下した。全製造業で見ると、売上高に対する研究費比率は0.18ポイントの微増となった。医薬品製造業ではわずかに低下したものの、引き続き売上の多くを新薬などの研究開発に積極的に投資している実態がうかがえた。
企業の自然科学に使った研究費を性格別に見ると、開発研究費が10兆3818億円、応用研究費が2兆3533億円、基礎研究費が9126億円。前年度に比べ開発研究費は1.0%増えたものの、基礎研究費は0.4%、応用研究費は0.2%の減少に転じた。
製造業では、全産業の中で基礎研究費の割合が最も低くなっているが、その割合について詳しく見ると、医薬品製造業は19.8%と、引き続き2割近くを創薬などの基礎研究に投入しており、基礎研究への投資が高い水準にあることが分かった。
一方、今年3月31日現在の研究者数を産業大分類別に見ると、製造業が42万8700人で、全体の88.2%を占めた。医薬品製造業の研究者は、2万1700人と前年度に比べて7.2%減少した。全産業の研究者1人当たりの研究費は2815万円と、前年度比で4.9%増加。産業別研究者1人当たりの研究費は、医薬品製造業が前年度比5.1%増の6710万円と最も多かった。
調査は、国内の科学技術に関する研究活動の状態を把握し、科学技術振興に必要な基礎資料を得るため、総務省が毎年行っているもので、今年も5月に実施した結果をまとめた。