インスリン分泌細胞(膵β細胞)の再生に成功
東北大学は12月15日、機能性核酸であるマイクロRNA(miRNA)の静脈投与によるインスリン分泌細胞(膵β細胞)の再生に初めて成功し、糖尿病マウスの高血糖が改善したと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科糖尿病代謝内科学分野の山田哲也准教授、突田壮平助教、片桐秀樹教授らのグループによるもの。研究成果は、「EBioMedicine」電子版に掲載された。
画像はリリースより
インスリンを分泌する膵β細胞は自己再生能が低く、糖尿病の根治を難しくしている大きな原因のひとつとなっている。これまでに骨髄移植が膵β細胞の再生を促進することが報告されており、骨髄細胞から分泌される何らかの因子が、膵β細胞の再生を促進していることを示唆したものの、同定はされていなかった。
2種類のmiRNAを同定、膵β細胞の再生促進でインスリン分泌が回復
近年、miRNAと呼ばれる機能性核酸が、標的遺伝子の発現を負に制御することで、発生、分化、細胞の増殖、アポトーシス、組織再生において重要な役割を担っていることが示されている。また、様々な細胞から分泌された細胞外小胞(エクソソーム)が、液性因子として生体内を循環し、内包するmiRNAなどの核酸をほかの細胞へ受け渡すことで、細胞間の情報伝達を媒介していることも明らかにされていた。
今回、同研究グループは、骨髄移植マウスで認められた膵β細胞再生のメカニズムとして、エクソソームを介する細胞間miRNA伝達が重要な役割を担っていることを発見。さらに、2種類のmiRNA(miRNA-106bとmiRNA -222)を同定し、これをインスリン分泌低下によって発症した糖尿病マウスに静脈注射で投与したところ、膵β細胞が増殖しインスリン分泌が回復、血糖値が改善したという。
これらの結果から研究グループは、miRNA-106bとmiRNA-222による膵β細胞の再生促進が、糖尿病の根治につながる新規治療法となる可能性があるとしている。
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