摂食嚥下障害の併存と関係がある因子が不明だった
東北大学は12月14日、認知機能障害と低栄養状態が入院時のうっ血性心不全(CHF)急性増悪患者における摂食嚥下障害併存の予測因子であることを科学的に実証したと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科内部障害学分野の横田純一大学院生、小川佳子元助教、上月正博教授らのグループによるもの。研究成果は「PLOS ONE」電子版に11月29日付で掲載されている。
画像はリリースより
CHFは、心機能の低下により肺や下半身に体液が貯留してしまい、肺水腫や下肢の浮腫が生じる疾患。近年CHFの患者数は世界的に急増しており、特に、さまざまな合併症や既往を持つCHF患者が増加していることが大きな問題となっている。
CHF患者における摂食嚥下障害の併存は誤嚥性肺炎などの原因となり、在院日数の長期化、予後の悪化、医療費の増大などの問題を引き起こす。そのため、入院時の摂食嚥下障害を早期に発見し、介入することは重要な課題と考えられる。しかし、CHF急性増悪患者のうちどのくらいの割合で摂食嚥下障害を持っているかは不明であり、摂食嚥下障害の併存と関係がある因子についても明らかになっていなかった。
誤嚥性肺炎の予防、入院期間の短縮、生命予後の改善に寄与の可能性
そこで研究グループは、CHFの急性増悪と診断され入院した患者を対象として、心臓超音波検査、心電図検査、血液・生化学検査、認知機能、運動耐容能、発声機能、日常生活自立度、栄養状態の評価を行った。その結果、摂食嚥下障害は38.6%に認められ、認知機能障害と低栄養状態が摂食嚥下障害の併存に関わっている因子であることが明らかになったという。
今回の研究は、CHF急性増悪患者における摂食嚥下障害の併存率を初めて前向きに調査したもの。この結果はCHF急性増悪患者における摂食嚥下障害の早期発見の一助となり、誤嚥性肺炎の予防、入院期間の短縮、生命予後の改善に寄与する可能性があると考えられると、研究グループは述べている。
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