不明だったドパミンD2受容体と精神・運動との関わり
東北大学は12月13日、統合失調症治療の標的分子として知られるドパミンD2受容体の新しい生理機能を発見したと発表した。この研究は、同大大学院薬学研究科の福永浩司教授、岐阜薬科大学の塩田倫史准教授らの研究グループによるもの。研究成果は「Molecular Psychiatry」オンライン版に12月6日付けで掲載されている。
画像はリリースより
ドパミンは、感情・意欲・運動・学習などに関わる重要な脳の伝達物質。ドパミンが結合するドパミン受容体の中で、ドパミンD2受容体は統合失調症、注意欠陥多動性障害(ADHD)やパーキンソン病などのさまざまな精神疾患に対する治療薬の標的になっている。ドパミンD2受容体と精神・運動との関わりはこれまで不明だったが、今回の研究でドパミンD2受容体の新しい細胞内活性化メカニズムと、そのメカニズムが抗精神病薬による精神安定作用と運動機能制御に関与することが証明された。
細胞内D2L受容体活性化作用を目指した精神疾患の新規治療薬の開発に期待
ドパミンD2受容体には、D2L受容体とD2S受容体の2種類の構造の異なる受容体が存在するが、ドパミンが細胞膜D2L受容体に作用すると、D2L受容体とRabex-5、Rab5および細胞の成長に関与するPDGF受容体が初期エンドソームに集積。D2L/PDGF受容体複合体はダイナミンタンパク質を介して細胞内に取り込まれ、初期エンドソームあるいはゴルジ装置に局在し、その結果、神経活動を高め、運動機能を制御することが明らかとなった。これは、細胞内D2L受容体の生理機能を実証した初めての成果であり、細胞内D2L受容体が新しい錐体外路機能調節薬および精神疾患治療薬の新しい創薬標的であることを示したものとなる。
細胞内D2L受容体とPDGF受容体の協同による活性化機構は、運動機能だけでなく精神機能にも深く関与すると考えられる。実際に精神異常の見られる動物では、細胞内D2L受容体を活性化することで、精神疾患治療薬に対する感受性が増大することから、今回の研究成果により細胞内D2L受容体活性化作用を目指した精神疾患の新規治療薬の開発が期待できると、研究グループは述べている。
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