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肺腺がんの発がん・進展に遺伝子TRIM58の不活性化が関与-徳島大

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2016年12月14日 PM12:45

がん抑制遺伝子不活性化にDNAメチル化異常関与も詳細わかっていなかった

徳島大学は12月12日、喫煙者・非喫煙者にかかわらず高頻度に発症する肺腺がんの発がん・進展に、新たながん抑制遺伝子「」の不活性化が関与していることを見出したと発表した。この研究は、同大学大学院医歯薬学研究部の井本逸勢教授、増田清士准教授(人類遺伝学分野)、丹黒章教授、梶浦耕一郎助教(胸部・内分泌・腫瘍外科学分野)らの研究グループによるもの。研究成果は、学術誌「Oncotarget」に掲載されている。


画像はリリースより

肺腺がんは早期診断、手術方法、抗がん剤治療の進歩により生存率が向上しているが、充分なものとは言えない。最近になって、大腸がんや乳がんなどに用いられているような分子標的薬が登場したが、その対象となる患者は限られており、新たな診断マーカーや治療標的の開発が望まれている。

DNAメチル化は、DNAに保存されている遺伝情報の読み出しを抑制する仕組みで、発生や体内の恒常性を維持する重要な分子機構を担っている。このDNAメチル化に異常をきたすと、がんや代謝疾患、免疫疾患、精神疾患などのさまざまな病気の原因となることが知られている。特にがん細胞では、さまざまながん抑制遺伝子の不活性化にDNAメチル化異常が関与していることから、これを詳しく調べることで有望な診断や治療標的の発見につながると考えられているが、その詳細はよくわかっていなかった。

TRIM58を指標とした早期診断法の確立に期待

研究グループは、肺腺がん手術組織を用いた解析から、喫煙者・非喫煙者にかかわらず早期にDNAメチル化が起こり、肺腺がんで特異的に不活性化されている遺伝子を複数見出した。さらに公共データベース情報やがん細胞を用いた検証を行い、これらの遺伝子の中からDNAメチル化によって不活性化される新たながん抑制遺伝子としてTRIM58を同定。検討を行ったすべての肺腺がん組織内でTRIM58遺伝子上流のDNAにメチル化が起こっており、これによりTRIM58遺伝子発現が低下していることを確認したとしている。

そこで、TRIM58を高発現している肺腺がん細胞株を作製し、解析を進めたところ、TRIM58はがん細胞の増殖や腫瘍の形成を抑制することがわかった。一方、TRIM58の機能部位に変異を導入すると、このがん抑制機能が不活性化されることも確認した。さらに、TRIM58によるがん抑制機構の詳細を明らかにするために、TRIM58を高発現する細胞内の遺伝子発現を調べたところ、細胞間や細胞と間質の間の結合を調節する遺伝子群の量が変化していた。がん発生初期に組織構造が崩壊することが知られており、がん初期におけるTRIM58の不活性化がこれらの一因であることが考えられるとしている。

今後、TRIM58を指標とした早期診断法の確立を目指すとともに、TRIM58の細胞内機能を特異的に制御する分子を特定することで、肺腺がんに有効な治療薬の開発を進めていくと、研究グループは述べている。

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