合併症リスクのため、全摘出が難しい良性脳腫瘍
大阪市立大学は12月12日、脳深部に発生する良性脳腫瘍である頭蓋咽頭腫に対する外科的治療において、発生部位に基づく新たな分類を用いて最適な手術法を選択することにより、徹底切除率98.6%、腫瘍制御率95.8%という極めて良好な治療成績を収めることに成功したと発表した。この研究は、同大学医学研究科脳神経外科学の大畑建治教授、森迫拓貴講師らのグループによるもの。研究成果は米医学誌「Neurosurgical Focus」のオンライン版に掲載された。
画像はリリースより
脳腫瘍は良性であってもその発生部位により、手足の麻痺や言語障害、視力低下、認知機能低下等が生じQOLを低下させる。良性脳腫瘍の多くは頭蓋底面に発生するため、手術により脳や神経・血管を損傷したり合併症が発生したりするリスクがある。このため、全摘出で完治可能な場合でも、合併症のリスクを回避するために部分的に腫瘍を残存させざるを得ないことがしばしばあるという。
病変発生部位に基づき4つに細分類、最適な手術到達法を選択
研究グループは良性脳腫瘍のひとつ、頭蓋咽頭腫を対象に、発生部位に基づき新たに4つに細分類し、最適な手術到達法を用いて徹底切除を行う方針を立てたという。頭蓋咽頭腫は、良性脳腫瘍のなかでも胎生期の頭蓋咽頭管の遺残から発生する稀な良性腫瘍。国内では年間15,000人の原発性脳腫瘍患者のうち、0.4%(約700人)が頭蓋咽頭腫といわれる。
同研究グループは、2000年1月~2014年12月に、同大学医学部附属病院で外科的切除術を行った頭蓋咽頭腫72例を対象として、全ての症例で積極的な切除を計画。病変を発生部位に基づいて、4つに細分類し、最適な手術到達法を選択したという。さらに、必要に応じてこれらを組み合わせた多数回での手術切除を計画し、病変を徹底切除。手術成績について検討した。
その結果、26例(36.1%)で多数回の手術を施行。43例(59.7%)で腫瘍が全摘出され、腫瘍の90%以上を切除した亜全摘出が28例(38.9%)、腫瘍の部分摘出が1例(1.4%)だったという。術前には82%の症例で認められていた視力視野障害については、術後には40.7%で視機能が改善。約5年の平均経過観察期間で腫瘍制御率は95.8%だったという。
頭蓋咽頭腫は病変に応じた最適な手術到達法を選択し、腫瘍を積極的に切除することで、多くの患者を救うことが可能になることから、同研究グループは、今回新たに作成した細分類法と手術到達法の選択基準を普及・標準化させ、頭蓋咽頭腫の治療成績向上に貢献していきたいとしている。
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