2015年にはピーナッツの離乳期早期摂取の有効性を確認
国立成育医療研究センターは12月9日、生後6か月より固ゆで卵を少量ずつ摂取させることで鶏卵アレルギーを8割予防できることをランダム化比較試験で実証したと発表した。この研究は、同センターアレルギー科の大矢幸弘医長、夏目統医員(現・浜松医科大学小児科)、同研究所、徳島大学ら研究グループによるもの。研究成果は「The Lancet」に12月8日付けで掲載されている。
画像はリリースより
日本国内において、鶏卵アレルギーは子どもの食物アレルギーの中で最も頻度が高く、3歳児の5.8%が医師の指示で鶏卵摂取を制限している。また、鶏卵をはじめピーナッツなど食物アレルギーの原因となりやすい食品については、これまで科学的と言い難い方法により実施された臨床研究の報告をもとに、離乳期早期からの摂取を避けることが望ましいと考えられていた。
しかし、湿疹やアトピー性皮膚炎がその後の食物アレルギーの発症と相関するという複数の調査結果や、乳児期からピーナッツを食べさせる習慣のある地域の方が、離乳期にピーナッツを食べさせない地域に比べ、ピーナッツアレルギーが少ないとの報告もなされている。
このような疫学調査により、「離乳早期にアレルギーをおこしやすい食品を食べさせると食物アレルギーを予防できるかもしれない」という仮説が提示されたことから、成育センターを始めとした複数の施設では、ナッツや鶏卵などの食物を離乳早期に与える介入を行うランダム化比較試験を開始。2015年には、ピーナッツ製品を乳児期から食べさせる介入を行ったランダム化比較試験の結果が「New England Journal of Medicine」に発表され、その後報告されたメタ解析においても、ピーナッツの離乳期早期摂取の有効性が確認されている。
1歳時の鶏卵アレルギーの発症が約8割減少
今回の研究では、より少ない人数で介入効果を調べるために、食物アレルギーを高頻度に発症することの知られている生後4か月までにアトピー性皮膚炎を発症した乳児を研究対象として、卵群とプラセボ群にランダムな割り付けが行われ、生後6か月から介入を実施。その結果、生後6か月より固ゆで卵を与えたグループは与えなかったグループに比べ、1歳時の鶏卵アレルギーの発症が約8割減少。これは予想を超える大差で、早期摂取した方が発症を予防できるという仮説が実証されたという。
今回の研究では、両群ともにアトピー性皮膚炎の治療を徹底して行ったという。これは、健康な腸管では、免疫寛容を誘導する働きが強いの比べ、湿疹のある皮膚から抗原が入るとアレルギー疾患の発症・増悪を起こすことが知られ、皮膚炎を放置すると経口摂取の効果に干渉すると判断したためとしている。
なお、今回の研究成果は、発症予防効果に関するものであり、すでに鶏卵アレルギーと診断されている乳児の鶏卵摂取の可否、及び予防を目的とした実際の鶏卵摂取については専門医の指導を仰ぐよう、研究グループは注意を呼び掛けている。
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・国立育成医療研究センター プレスリリース