睡眠と前頭前皮質の直接的な関係不明だった
筑波大学は12月7日、レム睡眠量を減少させると、ショ糖や脂質など、肥満につながる食べ物の過剰摂取が引き起こされる原因の一端を明らかにしたと発表した。この研究は、同大学国際統合睡眠医科学研究機構(WPI-IIIS)のミハエル・ラザルス准教授らの研究グループによるもの。研究成果は「eLife」オンライン版に12月6日付けで掲載されている。
画像はリリースより
睡眠不足の人は、十分な睡眠をとっている人に比べて、体重を増加させる嗜好性の高い食品をより多く摂取し、太りやすくなる傾向があり、睡眠の成分の中でも特にレム睡眠が不足すると、体重が増加することも報告されている。しかし、睡眠不足になるとなぜ高カロリーの食品を欲するようになるのか、その背景にある神経機構は不明だった。また、食物の嗜好に関わる前頭前皮質が重要な役割を果たしていると考えられてきたものの、睡眠との直接的な関係はわからなかった。
レム睡眠減少が代謝やエネルギーバランスに悪影響で体重増加の可能性
研究グループは、マウスのレム睡眠だけが特異的に減少することが観察された器具を用いてレム睡眠不足に陥ったマウスを準備し、その摂食行動に注目した。レム睡眠が不足したマウスでは、ショ糖、脂質ともに摂食量が増加。遺伝子改変技術と化学物質の組み合わせにより、人為的に前頭前皮質の神経活動を抑制したマウスでは、レム睡眠量が不足してもショ糖の摂取量は増加しなかったが、脂質の摂取量は神経活動を操作してもその影響を受けず、対照群と同様に増加することがわかった。このことから、睡眠不足の状態にあるとき、ショ糖を多く含み体重を増加させる、いわゆる「太りやすい」食べ物を摂取したくなる欲求は、前頭前皮質によって直接的に制御されている可能性が示唆された。
この成果は、レム睡眠と前頭前皮質、食物の嗜好性との直接的なつながりを初めて示したもの。レム睡眠は加齢とともに減少することが知られているが、今回の研究でレム睡眠量の減少は代謝やエネルギーバランスに悪影響を与え、体重増加につながる可能性があることが示された。
糖尿病や心血管疾患など、肥満と密接に関連する疾患は増加の一途を辿り、社会的に多大な経済的損失を招く原因にもなることが懸念されている。今回得られた知見を足がかりに、高齢化社会で健康的な食事行動を促進する、新たな神経薬理学的な戦略の開発が期待されると、研究グループは述べている。
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