培養細胞における季節性インフルエンザウイルスの増殖能の低さが問題
東京大学は12月1日、培養細胞で高い増殖能を持つB型インフルエンザウイルスの開発に成功したと発表した。この研究は、同大学医科学研究所感染・免疫部門ウイルス感染分野の河岡義裕教授らの研究グループによるもの。研究成果は「Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America」オンライン版に12月5日付けで掲載されている。
画像はリリースより
A型およびB型インフルエンザウイルス感染によって発症する季節性インフルエンザの予防には、ワクチン接種が最も有効であると考えられている。現行の季節性インフルエンザワクチンは発育鶏卵で増やしたウイルスから製造されているが、その増殖過程でウイルスの主要抗原であるヘマグルチニン(HA)に変異が入るとワクチンの有効性が大きく低下することが知られている。抗原変異が起きにくい培養細胞を用いてワクチンを製造することで、この問題を回避することが可能だが、培養細胞における季節性インフルエンザウイルスの増殖能の低さが大きな問題となっていた。
高い有効性期待できる細胞培養ワクチンの迅速な製造供給が可能に
研究グループは、1999年に8つのインフルエンザウイルス遺伝子を発現するプラスミドと4つのインフルエンザウイルスタンパク質を発現するプラスミドを細胞に導入することで、感染性を持つウイルスを産生させる「リバースジェネティクス法」を開発していた。
今回の研究ではこの方法を用いて、多様なB型インフルエンザウイルス株からなる変異体集団(変異ウイルスライブラリ)を人工的に作出。その変異ウイルスライブラリから培養細胞で高い増殖能を持つB型インフルエンザウイルス株を選別し、このB型インフルエンザウイルス高増殖株を母体に野外で流行しているウイルスの主要抗原を入れたウイルス株を作製して、その増殖能を解析した。その結果、このウイルス株は細胞培養ワクチンの製造でよく利用されている培養細胞において効率よく増殖することがわかったとしている。
今回の研究成果によって、従来の鶏卵ワクチンに比べ高い有効性が期待できる細胞培養ワクチンをより迅速に製造供給することが可能になると、研究グループは述べている。
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