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【臨床薬理学会シンポジウム】製販後調査を臨床研究に-世界に通用するデータ構築を

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2016年12月05日 AM10:00


■臨床薬理学会シンポジウムから

製造販売後調査の一部は臨床研究として実施すべきではないか――。1日に米子市で開かれた日本臨床薬理学会学術総会のシンポジウムで強調された。現行の製販後調査では、新薬の安全性評価などに役立つ新たなエビデンス構築にはつながらない場合もあるとし、臨床研究の枠組みで精度の高い製販後調査を実施し、世界に通用するエビデンスを発信する必要があるとの認識で一致した。

シンポジウムの演者

医師の楊河宏章氏(徳島大学病院臨床試験管理センター)は「日常診療の範囲を超える情報収集がしばしば製販後調査に含まれているが、本来、日常診療における医薬品の使用実態下での調査であり、診療以外の目的や手段を含めてはいけない」と倫理上の問題点を指摘。「製販後調査は、倫理審査や同意なしで行える観察研究ではない。有効性を見たい場合には観察研究として実施すべき。安全性監視という意図の介入研究もあり得る」と語った。

薬剤師の有馬秀樹氏(山口大学病院薬剤部)も、海外では臨床研究として実施されるものが日本では製販後調査として実施されるなど、日本の特殊性を指摘。「必要に応じて医療機関と臨床研究として契約、実施し、収集したデータをGPSPに則り企業内で再審査データとして取り扱えばいい」と呼びかけた。

また、エビデンス構築目的の特定使用成績調査は観察研究として実施し、人を対象とする医学系研究に関する倫理指針を適用させ、費用は観察研究としての適切な金額を設定することを提案。

MRが医師から調査票を回収する現行の製販後調査体制では、多忙なMRが十分に対応できないことがあったり、データの精度に問題があったりするとし、「CRCや薬剤師による積極的な調査支援を行いたい」と話した。

一方、日本製薬工業協会データサイエンス部会の小宮山靖氏()は、現行の製販後調査には過小報告というバイアスが存在するため、「開発段階で知られている、より高い副作用の発現割合が使用成績調査で観察された例は非常に限られている」と問題を提起。

「使用成績調査を実施した結果、新しいリスクは見つからなかったということが定型文になっているが、新しいリスクを見つけられなかったと反省する必要がある」と語った。

背景には、GPSP省令により製販後調査の方法が対照群と比較する概念がないことに根本的な原因があると言及。「特定の医薬品が投与された患者集団に何が起きるかという全体像を知った上で、因果関係を知り、適正使用につなげることが必要。因果関係の見極めやリスク集団の特定が重要になるが、使用成績調査主体ではほとんどの場合、全体像を知ることしかできない」と指摘した。

さらに、「比較研究は、企業に任せておくと積極的にやりたがらないという危惧がある。海外のように規制当局の意思で製薬会社にやらせるのはどうか。また、AMEDが製販後調査の比較研究にも資金を出し、アカデミアに実施してもらうのはどうか」と提言。将来的には、様々な観点の研究を世界が分業で取り組み、企業、アカデミア、当局が協力して実施することが理想と語った。

今後、製販後調査に医療情報データベースを活用できるようにGPSP省令の改定作業が進められる見通しだが、小宮山氏は「データベースの活用でやれることは一部でしかない。次のアクションを決めるためのスクリーニングとしての役割を果たすことが多いのではないか。個々の課題に対し様々な研究を行える環境を作ることが、より重要になる」と強調した。

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