11月25日の首相指示を受け、厚労省はこの日の部会で、イノベーションの推進と国民皆保険の持続性の両立を目指した薬価制度の抜本改革に向けて年内に政府基本方針を策定し、それに基づき具体的な方策をまとめる対応案を提示。基本方針の策定後、同部会を中心に関係者の意見を聞きながら検討し、改革案をまとめる方向性を示した。
支払側の吉森俊和委員(全国健康保険協会理事)は、「諮問会議の指摘は、中医協でも十分な議論がなされておらず、唐突に資料が出てくるのは遺憾」とし、「なぜ年内に基本方針というスケジュールなのか。次期改革に向け粛々と議論していくはずだった。丁寧に議論を進めていくべき」と述べた。
診療側の中川俊男委員(日本医師会副会長)も同調し、「薬価制度の見直しについては、中医協で全体の抜本改革が必要と合意してきた。それが諮問会議に指示されるような流れになっている」と批判。「薬価の仕組みを決める場は、中医協が最上位のはず。それを諮問会議で決めるのはいかがなものか。中医協の権威が崩れてしまう」と強い懸念を表明した。
幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)も「諮問会議での首相指示で中医協に命令されたような流れに違和感がある」と不快感を表明した。毎年薬価改定に対しても反対意見が相次いだが、幸野委員は「実勢にそぐわない価格を払い続けるべきではない」とし、実勢価がどういうメカニズムで乖離しているのか詳細なデータを要求。それをもとに判断していきたいとの考えを示した。
■毎年改定「断固反対」‐製薬4団体が声明
薬価制度の抜本改革に向けた議論スタートを受け、日本製薬団体連合会(多田正世会長)、日本製薬工業協会(畑中好彦会長)、欧州製薬団体連合会(カーステン・ブルン会長)、米国研究製薬工業協会在日執行委員会(パトリック・ジョンソン委員長)の製薬4団体は同日、会長名で声明を発表した。
4団体は、薬価制度の抜本改革について、「現行制度の構造上の問題や欠陥を補完し、是正しようとするものであり、業界として前向きに議論に参画し、協力する」と賛意を示す一方、「薬価改定を毎年実施するような政策は、企業の競争力を弱体化させ、国の成長戦略の方向性に大きく矛盾する」として断固反対の立場を表明した。
さらに、イノベーション評価の方向性について「具体性に乏しい」と指摘。少なくとも新薬創出等加算の定着を明確にするなど、研究開発投資のインセンティブとなる政策に強い期待感を示した。