重大な後遺症の原因となることが多い、遅発性脳血管攣縮
岡山大学は11月22日、くも膜下出血後に脳血管で生じる遅発性脳血管攣縮のメカニズムを明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医歯薬学総合研究科の西堀正洋教授(薬理学)と伊達勲教授(脳神経外科学)の研究グループによるもの。研究成果は、英科学誌「Scientific Reports」に11月24日付で掲載されている。
脳卒中には、脳梗塞、脳内出血、脳動脈瘤の破裂によるくも膜下出血の3種類がある。くも膜下出血は、突然の脳動脈瘤の破裂によって激しい頭痛と意識障害によって発症し、急性期に亡くなる場合もあるが、手術によって破裂した脳動脈瘤を処理した後、1週間から10日をピークとして生じる脳血管攣縮によって重篤な後遺症を残したり、死に至ることもまれではないことから、脳血管攣縮に働く薬物の開発が進められてきた。
しかし最近の臨床研究で、遅発性脳血管攣縮の抑制のみでは患者の予後改善に必ずしも十分ではないという新たな問題提起も加わり、くも膜下出血の治療法開発は混沌とした状況になっている。
臨床での応用に向けて治療薬開発を加速
今回研究グループは、ラットで作製されたくも膜下出血モデルで、脳血管の収縮メカニズムに収縮を誘発する受容体グループの発現上昇が関与すること、それらの上昇が、血管壁の平滑筋細胞から放出される細胞内タンパク質「High Mobility Group Box-1」(HMGB1)の働きによることを明らかにした。
また、出血2日後に生じる血管攣縮は、HMGB1の働きを中和する抗HMGB1抗体の投与によって強く抑制され、随伴する神経症状も劇的に改善させることが判明。そのため、急性脳障害につながる悪化因子の制御にも貢献していると推測できるという。
くも膜下出血の治療に向けての研究は今後も継続する必要があるが、この抗HMGB1抗体治療は、有望な治療法として期待される。同研究グループは、ヒトの治療に使えるヒト化抗HMGB1抗体の作製に成功しており、臨床応用に向けて治療薬開発を加速させる計画だとしている。
▼関連リンク
・岡山大学 プレスリリース