タンパク質DCARが免疫応答を活性化
九州大学は11月24日、タンパク質DCARが、結核菌に含まれる特有の成分であるホスファチジルイノシトールマンノシド (PIM)とよばれる糖脂質を認識する受容体として働き、免疫応答を活性化していることを発見したと発表した。この研究は、同大生体防御医学研究所の山﨑晶教授らと琉球大学などの共同研究グループによるもの。研究成果は、米科学誌「Immunity」の電子版で公開されている。
画像はリリースより
結核は世界人口の約3分の1が感染しており、先進国のなかでは日本でも罹患率が高い感染症。近年では「結核の再燃」や「多剤耐性結核」が問題となっている。また、今日広く使われているBCGワクチンは乳幼児には有効だが、成人に接種した場合の有効性は低く、結核菌の制御は今なお世界レベルで重要な課題である。しかし、健康な人間の体がどのように結核菌を認識・排除しているのか、その分子機構は明らかになっていなかった。
さまざまな感染症や次世代の結核ワクチン開発に期待
同研究グループは、DCARと呼ばれるタンパク質に着目。DCARはC型レクチン受容体のひとつとして知られているが、その機能やリガンドは不明だった。研究グループはまず、DCARが標的を認識すると細胞が蛍光を発するシステムを構築。この細胞に結核菌を加えて培養したところ、強い蛍光が検出されたことから、DCARが結核菌の何かを認識していることが判明した。そこで、この結核菌をさまざまな溶媒で溶出して成分を細かく調べ、最終的にPIMがリガンドであることを特定したという。
さらに、DCARは特殊なマクロファージに限局して発現しており、結核菌のPIMがDCARに結合すると、このマクロファージが活性化されることが判明。活性化したマクロファージは、サイトカインを放出してさらにT細胞を活性化させることで、菌の排除に寄与していることも明らかとなったという。
この新たな経路をPIMの合成アナログ、DCARに対する抗体などを用いて人為的に活性化させることで、結核のみならず、さまざまな感染症やがんワクチンの開発につながることが期待されると、研究グループは述べている。
▼関連リンク
・九州大学 研究成果