ボノボの老眼を定量的に分析、人間と比較
京都大学は11月8日、人間に最も近い類人猿である野生のボノボの老眼の進行が人間と非常に似ていることを発見したとする研究結果を発表した。この研究は、同大学霊長類研究所博士課程の柳興鎭らによるもの。研究成果は、米学術誌「Current Biology」で発表されている。
画像はリリースより
人間の寿命は更年期の後も約20~30年以上続くが、このように長い寿命が人間特有なことなのか、他の霊長類でも似た例が存在するのかについては、専門家の間で意見が分かれている問題である。今回の研究では、人間の身体の老化の現象でよく知られている老眼がボノボで発見されるか、そうであるなら、それはどのように進むのか人間と定量的な比較を試みた。
人間の長寿命、社会的・環境的な要因によって促進か
研究グループは、デジタルカメラと巻尺を用いてボノボの耳の長さを測定し、この耳の長さを利用してボノボが毛繕いをするときの目と指間の距離を測定。その結果、野生ボノボの老眼の進行が人間の老眼進行速度と酷似していることを発見した。ボノボは毛繕いをするとき、目と指の間に一定の距離を維持するが、特に40歳を前後にその距離が著しく増加する。研究グループでは、この毛繕い距離が年齢の増加に応じて指数的に増加することを発見し、この増加のパターンが人間とほぼ一致することを明らかにした。また、老眼の進行は人間と同様、メスとオスで相違は認められなかったという。
これまで、野生のチンパンジーでも老眼の事例報告があったが、これを定量的に分析して人間と比較した研究は、今回が初。もし、目だけでなく他の体の部位の老化も同様に起こる場合、人間の長寿命は進化的に選択されたものではなく、社会的・環境的な要因によって促進された可能性が高いとしている。
また、老眼が発見されたボノボのうち、3頭がオスであった。野生のオスチンパンジーはほとんど40歳に到達せず死ぬため、野生のオスのチンパンジーではまだ老眼が報告されていない。仮に野生のオスボノボが野生のオスチンパンジーに比べて老眼が来るまで、より多く生き残るなら、ボノボの寛大で平和的な社会環境が、ボノボのオスの長寿命に影響を与えていると考えることができるという。
現代人間の長寿命もこのような社会環境の要因に大きな影響を受けたと考えることができるため、今後の比較研究に重要に考慮すべき事項とされる。今後も、人間の進化を理解するためには、長期的に霊長類の屋外調査地を行うことが重要である、と研究グループは述べている。
▼関連リンク
・京都大学 プレスリリース