診断精度の低さが指摘される心臓サルコイドーシス
国立循環器病研究センターは11月21日、非虚血性心筋症の心筋組織に浸潤する免疫担当細胞の種類や性質に着目することにより、心臓サルコイドーシスの新たな病理組織補助診断法を発見したと発表した。この研究は、国循心臓血管内科部門の永井利幸医師、安斉俊久部長、臨床病理科の池田善彦医長、植田初江部長、北海道大学大学院医学研究科循環病態内科学分野の合同研究チームによるもの。研究成果は、米国心臓協会科学誌「Journal of American Heart Association」オンライン版に11月17日付で掲載されている。
画像はリリースより
サルコイドーシスは、全身諸臓器に肉芽腫が形成される疾患。発症の一因として、細菌など何らかの抗原に免疫が過剰反応することが報告されている。サルコイドーシスでは、特に心臓病変(心臓サルコイドーシス)の有無が生命予後を左右するため、心臓病変の早期かつ正確な診断と免疫抑制療法による治療介入が求められている。
心臓サルコイドーシスの診断は心筋組織からサルコイド肉芽腫を証明することが最善の方法だが、この手法による診断率は心臓サルコイドーシス症例のわずか2~3割程度と報告されている。そのため、厚生労働省や米国不整脈学会の診断基準では、心筋組織からサルコイド肉芽腫を証明できなくとも診断可能としているが、一方で診断精度の低さも指摘されている。
樹状細胞とM1マクロファージが多数浸潤
合同研究チームは、国循および北大に入院し、心臓サルコイドーシスの確定診断が得られた95症例と他の非虚血性心筋症(拡張型心筋症、肥大型心筋症、高血圧性心筋症など)50症例の心筋組織検体を免疫組織学的染色で解析した。
まず、心臓サルコイド肉芽腫の病理組織の特徴を調べたところ、炎症細胞であるT細胞の他に、免疫細胞(抗原提示細胞)である樹状細胞が多数浸潤していることが判明。さらに、浸潤したマクロファージの多くが炎症性のM1マクロファージであるということを突き止めた。次に、心臓サルコイドーシス症例において、サルコイド肉芽腫を認めない心筋切片の特徴を調べると、心臓サルコイドーシス以外の非虚血性心筋症と比較して、樹状細胞とM1マクロファージが多数浸潤しているという特徴が認められたという。
合同研究チームはこれらの研究結果について、診断精度の妥当性検証や慢性心筋炎との鑑別など課題が残るとしてる。その一方で、非虚血性心筋症の鑑別診断において、心筋生検によって得られた心筋組織にサルコイド肉芽腫を認めなかった場合も、樹状細胞やM1マクロファージの浸潤が多数認められる場合は、現行の診断基準を満たさなくとも心臓サルコイドーシスを疑い、慎重な経過観察と診断確定のために画像診断など検査を繰り返す必要がある、と述べている。
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・国立循環器病研究センター プレスリリース