同院では、後発品の有効性・副作用情報の少なさや適応に差があることを理由に、一部薬剤で先発品と後発品を併用して採用している。その一つが免疫抑制剤だが、免疫抑制剤の後発品は移植患者に使用した場合のデータが少なく、先発品との生物学的同等性には疑問があるとの報告もある。そのため、全ての臓器移植が可能な同院では、移植患者に必ず先発品を使う方針を打ち出す一方、自己免疫疾患患者には後発品を使用する方針のもと、先発品と後発品を採用している。
今回、木下氏らは、この方針が遵守されているかどうかと、後発品採用による病院収益について検討を行った。免疫抑制剤のミコフェノール酸モフェチル、タクロリムス、シクロスポリンの3剤を対象に、昨年5月から今年2月までの入院患者について調べたところ、実際には後発品が多数の移植患者に使用されていることが分かった。
木下氏は「医師が処方するとき、薬剤選択画面に先発品と後発品が同時に表示され、どれが後発品か医師に情報が伝わっていない」と原因を考察。「大学病院で医師の出入りも激しく、移植患者に先発品を使用する方針が十分に周知されていなかったのではないか」とした。
また、免疫抑制剤の先発品と後発品の外観が類似しており、薬剤師の調剤時に何件も間違えが発生している状態だったことから、先発品と後発品の併用採用は医師や薬剤師にヒューマンエラーを誘発しかねず、安全な医療を提供しにくい状況にあることが分かった。
また、先発品と後発品の使用率を比べたところ、ほとんど後発品は使用されておらず、使用割合は4~12%だった。また、後発品の採用による増収は約89万円にとどまった。
これらを踏まえ、木下氏は「後発品の採用時には安全な医療の提供と経営面、医療者のエラー防止の三つの観点から採用を決める必要がある」と指摘。後発品の採用時は収入面だけで判断するのではなく、安全な医療を提供し続けるためには、薬剤の管理者である薬剤師が積極的に関わる必要があるとの考えを示した。