18、19日に京都市で開かれた日本薬剤疫学会学術総会で報告されたもの。製販後調査をめぐっては、これまでも膨大な人的、金銭的コストがかかることが問題点として指摘されていたが、その実態は明らかになっていなかった。
廣居氏はまず、武田薬品が14年度に製販後調査に投じた費用を試算した。医療機関への謝礼6.1億円のほか、データマネジメント費用、各種業務委託費、印刷費などを合計した直接費は18.9億円。MRと内部スタッフの人件費を合計した間接費は17.1億円。直接費と間接費を合わせると約36億円だった。間接費は、MR業務の2.5%が製販後調査に費やされていると想定。MR数に平均年収を乗じた上で2倍し、その2.5%分の金額を算出した上で、製販後調査を担当する内部スタッフ33人の人件費を2倍した金額を加えて算出した。
一方、日本製薬工業協会に加盟する製薬会社が14年度、製販後調査の謝礼として医療機関に支払った金額は165.9億円。これらのデータをもとに、製薬協加盟会社が14年度に製販後調査に投じた費用を試算すると981億円に達することが明らかになった。MRの業務負担割合を変動させて算出したとしても「概ね775億円から1500億円の範囲になる」とした。
こうした背景を踏まえ現在、GPSP省令改正に向けた作業が進められている。同学術総会で医薬品医療機器総合機構(PMDA)の担当者は「現状のGPSP省令は、データの二次利用を明確に想定したつくりにはなっていない」と指摘。10拠点23病院の電子カルテ情報などを集約した医療情報データベース「MID-NET」が18年度に本格稼働する予定で、それまでにGPSP省令を改正する見通しと説明した。MID-NETは企業も活用可能な体制にし、企業が実施したデータベースを使った薬剤疫学調査を正式に受け入れる方向で対応を進めている模様だ。
実際に、GPSP省令改正に向け、PMDAが来春までに公表予定の「医薬品製造販売後の安全対策における電子診療情報の活用に関する基本的考え方」は、産官の対話を経てほぼ合意に達しているという。この考え方には、▽使用成績調査の結果は、科学的根拠が必ずしも得られていないとの指摘がある▽実施できる場合にはデータベースを活用した調査を積極的に実施する▽科学的根拠が取得できるよう原則として対照群を設定した上で実施することが望ましい――などの文言が盛り込まれる見込みだ。
GPSP省令改正後の展望について廣居氏は「製販後調査は段階的に変わっていくだろう」と語った。まずは、現行の方法に加えて医療データベースの活用が可能になり、その次の段階としては通常は医療データベースを活用しながら、副作用らしきシグナルが出た場合に次世代型の一次情報収集を行うことが望ましいとし、「今のデータベースの構造上、完全に現行の製販後調査を代替するのはかなり難しい。こういうアプローチが現実的」とした。