細胞増殖のブレーキ役p53タンパク質に異常のない患者も存在
九州大学は11月18日、細胞をがん化させる新しいがん遺伝子「GRWD1」を世界で初めて発見したと発表した。この研究は、同大学薬学研究院医薬細胞生化学分野の藤田雅俊教授、同大学生体防御医学研究所の中山敬一教授、国立がん研究センター研究所の清野透分野長らの研究グループによるもの。研究成果は、分子生物学会誌「EMBO Reports」に11月17日付けでオンライン掲載されている。
画像はリリースより
がん細胞においては、p53と呼ばれる細胞増殖の“ブレーキ”役であるタンパク質の異常が頻繁に起こっていることが知られている。しかし一方で、p53に異常のないがん患者も多く存在している。
正常に増えている細胞中では、p53タンパク質はMDM2というタンパク質の働きで分解されている。細胞が異常な増殖刺激やDNAダメージなどのストレスに晒された場合、RPL11というタンパク質がMDM2に結合しその機能を抑える。その結果、p53量が増加し、細胞の増殖を止めて異常を修復したり、修復しきれない場合は細胞を自殺させ、がん化を防いでいる。
GRWD1を標的とする新たな抗がん剤開発に期待
研究グループは今回、GRWD1がRPL11というタンパク質との結合を介してp53タンパク質量を減少させ、細胞のがん化を促進させることを初めて明らかにした。さらに、がん患者のデータベースの解析から、いくつかのがんの種類においては、GRWD1タンパク質量の増加はがんの悪性度を上昇させ、予後不良の予測因子となり得ることを発見したとしている。
今後の研究の発展によって、GRWD1発現検査によるがん治療方針のより適切な決定や、GRWD1を標的とする新たな抗がん剤開発につながることが期待されると、研究グループは述べている。
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・九州大学 プレスリリース