災害時でも継続した情報提供を可能にする地域分散型ストレージシステム
東北大学は11月17日、甚大災害による機材損壊があっても重要な情報を保全できる耐災害性の高い地域分散型ストレージシステムを活用した、大規模災害後の迅速な調剤活動に関する実証実験を、11月23日に東北大学片平キャンパス内さくらホールにて、訓練形式で実施することを発表した。
画像はリリースより
この実証実験は、同大学電気通信研究所の研究グループと、宮城県薬剤師会が合同で行うもの。文部科学省の委託研究である「高機能高可用性情報ストレージ基盤技術の開発」プロジェクトの取り組みのひとつとして、再委託機関である株式会社日立製作所および株式会社日立ソリューションズ東日本の協力を得て実施するという。
東日本大震災では、ネットワークシステムの損壊によって、被災地から遠隔地に保管された情報へのアクセスが不可能となる事象が発生。これにより、広域のネットワークシステムへの接続が断絶した場合においても、発災直後に必要となる住基情報や医療情報等の重要なデータの可用性の確保が課題であることが明らかになっていた。そこで、同研究グループでは、大規模災害時にも情報を安全に保存し、継続した情報サービスを提供できる耐災害ストレージシステム技術の開発に2012年9月より取り組んできたという。
避難所における調剤活動が速やかに実施できるかを訓練形式で検証
この耐災害ストレージシステム技術は、情報を分散保存するリスクアウェア複製方式と分散した情報を再構成するマルチルートリストア方式の2つの方式から構成される。リスクアウェア複製方式は、県内、市内などの限定した範囲内で地理的に分散した複数のストレージ装置からなる地域分散型ストレージシステムにおいて、データのバックアップを行う際に、複製元装置と複製先装置の同時被災リスクがなるべく低くなるように組み合わせる方式。この方式により、災害後にデータが残存する割合を向上させることができるという。
マルチルートリストア方式は、大規模災害によりインターネットなどの広域網が断絶した場合でも、近隣の複製先装置に残るバックアップデータを並列でリストアすることによってデータを復旧する方式。この方式により、短時間で情報サービスを再開できるという。これまでに同研究グループは、この2方式からなる耐災害ストレージシステム技術の開発と、検証環境の構築準備を行ってきた。
これらの開発技術を実装したストレージ装置を仙台市内にある東北大の片平、青葉山、星陵の3キャンパスに地理的に分散して配置し、地域分散型ストレージシステム (愛称:DATEstor)として構築。同構築では、2014年度に実施した第一次実証実験の課題を踏まえるとともに、仙台市規模の都市を想定してシステムの拡大を図ったという。今回の第二次実証実験の検証環境となる地域分散型ストレージシステムは、大規模と小規模の2つのクラスタシステムから構成され、それぞれリスクアウェア複製方式とマルチルートリストア方式を検証する目的で使用する。
今回の実験では、宮城県石巻市にある保険薬局の医療情報システム復旧を実施する想定ケースに基づき、システム復旧開始から調剤活動が開始できるまでの時間を、開発した地域分散型ストレージシステムの活用により短縮できるかどうかを検証する。実施時間は、9時30分開始、12時頃終了予定。見学席が用意され、実験の様子を誰でも自由に見学することができる。
▼関連リンク
・東北大学 プレスリリース