■算定方法に疑義の声多く
厚生労働省は16日、高額薬剤をめぐる議論の焦点となってきた抗癌剤「オプジーボ点滴静注」の薬価を緊急的に50%引き下げる改定案を中央社会保険医療協議会の薬価専門部会と総会に示し、了承された。製造販売業者の小野薬品に不服意見の機会を与える方針だが、不服がなければ24日に新薬価を告示し、来年2月から適用する。薬価調査を実施しない緊急改定では、2016年度の推計販売額を暫定的に1516億円(薬価ベース)と算出。これが特例拡大再算定の最大50%引き下げ要件に当たると判断した。ただ、委員からは算定根拠に相次いで疑義が示され、「1500億円を超えるかどうかで企業に大きな影響を与える」と手続きの信頼性、透明性を質す意見も出た(関連記事2面)
厚労省は、緊急改定で算定するオプジーボ点滴静注の薬価について、同社公表の年間予想販売額1260億円(仕切価ベース)から流通経費7%、消費税8%、乖離率3.45%を考慮し、1516億円(薬価ベース)と算出。これが特例拡大再算定の「1500億円超で、予想販売額の1.3倍以上」の要件に当たることから、薬価を最大限となる50%引き下げることにした。
これにより、オプジーボの薬価は「同点滴静注20mg」が現行の15万0200円から7万5100円、「同点滴静注100mg」が72万9849円から36万4925円に半額となる。厚労省は、小野薬品に不服意見を提出する機会を与える方針。不服がなければ24日に新薬価を告示し、医療機関の在庫管理などを考慮して来年2月1日から適用する。
今回の緊急改定は、あくまでも暫定的なものとの位置づけで、推計販売額も企業公表の予想年間販売額をもとに算出した。ただ、委員からは、流通経費を医薬品産業実態調査報告書の12~14年度の平均値としたこと、乖離率は15年薬価調査の「その他の腫瘍用薬(注射薬)」の平均乖離率6.9%に、新薬創出等加算品目であることを考慮して2分の1としたとの説明に対し、疑義が相次いだ。
診療側の万代恭嗣委員(日本病院会常任理事)は、「乖離率を2分の1とした根拠は何か」と質した。厚労省保険局の中山智紀薬剤管理官は「より厳しく見積もりたいと考え、2分の1とした」と説明。万代氏は「自分の計算では1500億円に満たない。(引き下げ率が変わる)微妙な部分だけに納得いく説明がほしい」と要求。松原謙二委員(日本医師会副会長)も「乖離率も含め、算定方法の推計が仮定を重ねていることに不安を覚える」と指摘。「算定方法に信頼性がなければ、大きなダメージを企業に与える」と懸念を表明した。
さらに、支払側の幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)は「引き下げ率は25%と考えていただけに、なぜ50%になったのか算定方法に疑問がある」と疑義を示した。